お役所広報に元ライターがダメ出し 自治体の内なる改革

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 文字だらけ、専門用語、ありきたりな言葉。「読まれない」文書の典型とも言われる役所の広報やポスターを、東京都足立区は10年かけて改革してきた。エンジンになっているのは、フリーライターから転身した区職員らによる「ダメ出し」だ。

 7月下旬の足立区役所。区立郷土博物館で今秋に開く展覧会のチラシの打ち合わせが開かれていた。

 江戸時代に活躍した地元ゆかりの絵師に谷文晁(たにぶんちょう)がいる。その孫の作品を集めた展覧会だ。博物館側は「谷文晁の末裔(まつえい)―二世文一と谷派の絵師たち―」というタイトルを提案した。だが、シティプロモーション課の舟橋左斗子(さとこ)さん(59)が突っ込んだ。「めっちゃ硬い。知らない人は『谷文晁』という言葉に目を止めない。キャッチーな言葉がほしい」

 アイデア出しが始まった。しばし沈黙が続く。「文晁の孫に焦点を当てた展示は本邦初なんです」という博物館側のひと言に、舟橋さんが反応した。「その要素を入れたらいいじゃない」。案を出し合う。〈いま明かされる〉〈幻の〉〈未知の〉……。10分後に、キャッチコピーは〈まだ見ぬ謎がそこにある〉に決まった。

 舟橋さんは広告会社勤務やフリーライターを経て、2010年に同区にシティプロモーション課が出来た際、係長として採用された。区が「治安が悪い」「ヤンキーが多い」などの誤ったイメージを一新しようと設けた課だ。各部署の広報物の見直しも担った。

 舟橋さんが驚いたのは広報物の多さだった。しかも、なんとなく考えた文字や写真でスペースを埋めただけという例が多い。中小企業融資の案内なのに、事業と関係ない区内の庭園の写真を大きく掲載したもの。「都市計画審議会」の区民委員の募集なのに活動内容がきちんと書かれていないもの。文字量が多くなりがちな背景を、同課で入庁10年目の加美山(かみやま)拓也さん(36)は「公文書や議会答弁に慣れ、クレームを避けたい危機意識もあるから、あれこれ文字情報を入れがちなのかも」と推測する。

 二十数年前から区内で暮らしてきた舟橋さんも、職員になる前は自宅に配られる区のチラシを読んでいなかった。「伝わらなければ、費やした労力や税金も無駄になってしまう」と改善に取り組みはじめた。

始まった改革、「余計な口出し」反発も

 近藤やよい区長の号令で、全…

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