プロスポーツ変える「価格ビジネス」 チケット代の秘密

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聞き手・橋田正城、写真・恵原弘太郎
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 創業3年、社員20人足らずの会社のビジネスがプロスポーツ界を席巻しています。扱うのは、売れ行きにあわせて価格を刻々と変動させる「ダイナミックプライシング」と呼ばれる仕組みです。プロ野球5球団、Jリーグ13クラブが導入し、浜崎あゆみさんのコンサートでも採用されました。創業者の平田英人(ひでと)社長(47)は三井物産社員。物産マンになって22年で、そのうち延べ13年が出向生活です。出向先の経営が厳しく、社員に転籍を求めた苦い経験もあります。ビジネスの酸いも甘いも熟知した平田さんに「ダイナミックプラス」という会社をつくった理由と、価格ビジネスの取り組みを聞きました。

写真・図版
昨季からダイナミックプライシングを全試合で導入した千葉ロッテの本拠で。「コロナ禍で入場者数が制限され、価格の価値が見直されていると思う。幅広い分野に普及させたい」=千葉市のZOZOマリンスタジアム

ヤンキースタジアムでひらめいた

 ――なぜ、会社を立ち上げたのですか。

 米国駐在員だった2013年7月、ニューヨーク・ヤンキースタジアムで松井秀喜さんの引退式がありました。最前列は1席8万5千円程度で手が届きませんでした。ところが、2列後ろは5万円ほどだったので買うことができました。僕にとって一生の価値を見いだせる価格で、息子と2席分を買いました。

 米国では休日に野球やフットボール、バスケットボールアイスホッケーを何度も観戦しました。どんな競技でもチームの順位は上下し、それによって試合の位置づけが変わります。すると、座席の価格も変わることを知りました。また、ブロードウェーのミュージカルも、有名な演者が休演するときには価格が下がっていました。ダイナミックプライシングが至る所で導入され、価格が柔軟に変わる社会だと感じました。

 対照的に、日本のスポーツやエンターテインメントは価格が固定的で、ざっくりとした「相場」で決まっているように思えました。価格は本来、需要を細かく分析し、供給数を踏まえた上で決まります。需要は刻々と変化するので、価格も動いて当然でしょう。価格の決まる過程を見直す余地があると思いました。科学的に価格を決める手法を導入すれば、産業として発展するだろう、と。

 ――ダイナミックプライシングは、どんな仕組みですか。

 販売実績や足もとの需要をデータ化し、人工知能(AI)を使って最適な価格を提案します。たとえば、プロスポーツで緊迫した首位攻防戦なら価格は上がり、消化試合はその逆になります。競技場は席の中央と通路側で見え方も異なり、需要も違います。だから各席で価格が変わる、という考え方です。米国の会社から権利を買い取り、2018年に会社をつくりました。

頼みはAI、値段は刻々と変動

 ――どういう業種に適用できますか。

 供給数に限りがあるものでしたら、どの業種にも導入できます。小売業や飲食業で採り入れたら商品の廃棄ロスを減らすことにつながると思います。価格を動かし、需要をコントロールすれば在庫を最適化できるからです。交通機関も座席数に限りがあるので、適用できます。不正転売を防ぐために即日完売をめざさず、当日まで販売できるようにします。

 ――価格はどうやって算出しますか。

 まず、過去の販売データと現在の売り上げ状況を組み合わせ、販売の予測モデルをつくります。

 プロ野球で使う過去のデータ…

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