暗記しなかった2分半の選手宣誓 本音を伝えた軟式球児

高橋健人、小俣勇貴
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(26日、全国高校軟式野球選手権1回戦 城西2―8比叡山)

 37年ぶりに「軟式の聖地」に戻ってきた城西(東京)。主将の小笠原直樹(3年)は前日、明石トーカロ球場で8チームが参加した開会式で選手宣誓をした。そこに、背負ってきた思いをまっすぐにぶつけた。

 「1年前、『まだ仲間と野球がしたい』という気持ちがありながらも、引退せざるをえない先輩たちの姿を私たちは間近で見てきました」

 2年生だった昨年5月、全国高校選手権の中止が発表された。同じように全国高校選手権が中止となった硬式野球では各地で独自の大会が開かれたが、東京の軟式チームに与えられた場は1試合限定の交流試合。城西は江北との試合を3年生のみで戦い、2―9で大敗した。

 「様々な感情がわき上がる中でも、先輩たちは私たちに優しい言葉をかけてくれたことを、昨日のことのように思い出します」

 東京都豊島区にある城西の校庭は狭い。先輩たちとの絆を深めてきた練習場所は、都立公園だった。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言により、そこでともに過ごす時間も奪われた。

 「やり場のない思いに、私たちも最初は苦しみました。部活をやる意義さえ見失いかけた者もいました」

 責任感が支えだった。昨春入学した1年生(現2年生)は、当時の最上級生と一度も練習する機会がないまま最初の夏を終えた。チームの伝統だった全員でやるグラウンド整備や道具の片付けを、下級生は経験できていない。自分たちの世代で全てを伝えなければならなかった。

 「今日まで野球に限らず、普段の生活が戻ってくることを信じ、一日一日、一歩ずつ練習を重ねてきました」

 今年に入ってからもコロナ禍で全体練習ができない期間はあった。練習場所の確保に苦しむなか、何度か硬式野球部が専用グラウンドを使わせてくれた。

 「今回の大会は、私たちを支えてくれた方々に対し、『感謝』を伝えていく大会だと思っています」

 文言を暗記する練習はしなかった。本音を文章にしたから、よどみなく言葉を紡ぐことができた。2分半に及ぶ宣誓を、こう締めくくった。

 「一投一打、全力プレーで報いることを誓います」

 迎えた26日の初戦。笑顔を絶やさず戦い抜いた。五回に四球を選び、大声で「よっしゃー」。七回に安打を放つと一塁からベンチに向かって右拳を突き上げた。九回2死走者無しから、自分が放った左飛で試合が終わった。整列に加わり、仲間とハイタッチ。「やりきった」。そう思える夏になった。(高橋健人、小俣勇貴