智弁学園、サヨナラはとっさの機転から 明徳を惑わせる

山口裕起
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(26日、高校野球選手権大会 智弁学園3-2明徳義塾)

 とっさの判断だった。智弁学園の森田空は寝かせていたバットを立たせ、高めの直球をとらえた。打球が中堅手の前で弾むと、球場の空気は一変した。

 1点を勝ち越された直後、九回裏の攻撃。先頭の垪和(はが)拓海が左前安打で出る。次打者森田への指示は送りバント。サインを確認しながら、試合前の小坂将商(まさあき)監督の言葉を思い出していた。「バントシフトを敷いてきたら、打て」。2球目。前進してくる三塁手が視界に入った。強攻に出た。「狙い通り。思いっきり上からたたきました」

 リードしているはずの、明徳義塾の動揺を誘う。「バントだと決めつけていた」と左腕の吉村優聖歩(ゆうせふ)。好投してきた2年生の指先を狂わせた。死球で塁が埋まると、4番の山下陽輔も死球で同点に。続く岡島光星が前進守備の二塁手の後方へ、ぽとりと落ちるサヨナラ打を放った。

 粘り強く、しつこく、いやらしく。「めざしていた野球をほんまにようやってくれた」と小坂監督は興奮した。

 かつて、苦杯をなめさせられた。7年前の第96回大会の1回戦。岡本和真(現巨人)を擁し、強打が自慢のチームが、4―10で敗れた。小技も絡めて畳みかけられての完敗だった。

 その時以来の再戦。四回、バント安打と犠打を絡めて1死満塁とされ、スクイズで先取点を奪われた。吉村にも苦しめられ、終盤まではまた相手のペースで進められた。

 ただ、耐える力は備わっていた。九回、ソロ本塁打で勝ち越された後、なおも1死満塁のピンチを背負った。一―捕―二の併殺を完成させ、切り抜けた。

 九回裏の森田の機転は、相手の馬淵史郎監督をも慌てさせた。送りバントを見越して1死二塁で迎える中軸への算段を練っていたという監督は、「2番に打たれた時点で想定が崩れた。向こうが一枚上だった」。

 3回戦までの3試合で計22得点の強打だけではない。明徳義塾のお株を奪うしたたかな攻撃で、小坂監督が主将だった1995年以来、26年ぶりの夏4強を決めた。(山口裕起)