自民党総裁選が9月17日告示、同29日投開票で実施される日程が決まり、事実上の選挙戦が始まった。「ポスト菅」へ名乗りを上げた岸田文雄前政調会長は、党内に充満する菅義偉首相に対する不満の「受け皿」をねらう。
26日午後の国会。久しぶりの記者会見の舞台に立った岸田氏は、ふっきれた表情で、ゆっくりと言葉に力を込めた。
「自民党が国民の声を聞き、そして幅広い選択肢を示すことができる政党であることを示し、我が国の民主主義を守るために総裁選に立候補する」
岸田氏にとって、今回の出馬は、自らの政治生命をも左右する賭けだ。
総裁選で支援を期待したのは、党内最大派閥の細田派(96人)に影響力がある安倍晋三前首相と、第2派閥の麻生派(53人)を率いる麻生太郎副総理兼財務相だった。しかし、両氏は菅氏の再選を支持する構えを崩していない。単純な足し算では勝利への道筋は見通せないからだ。
現職首相と争って敗れれば、岸田氏も派閥の仲間も党内での立場が厳しくなりかねない。実際、昨秋の総裁選で首相に敗れ、岸田氏は党や政府の要職から外れている。派閥幹部でさえ「立候補には反対だ」と語っていた。
一度は菅首相に敗れ、要職を干された岸田氏はなぜまた名乗りを上げたのか。記事後半では、立候補会見で岸田氏が語ったその理由を紹介します。
それでも立候補に踏み切った…