日テレ「スッキリ」検証番組、アイヌ民族から評価と要望
日本テレビ系の情報番組「スッキリ」でアイヌ民族に対する差別的な表現があった問題で、日本テレビは26日、同番組内で検証番組を放映した。北海道のアイヌ民族や関係者からは内容を評価する声のほか、今後の取り組みへの要望も出た。
検証番組は約30分間、CMを挟まずに放送した。放送に至った経緯や再発防止策を説明し、改めて謝罪した。後半ではアイヌ民族の歴史を追った映像なども流した。
この問題は3月、同番組のコーナーで、アイヌ民族の女性を取り上げた映像作品を紹介した際、アイヌ民族を傷つける不適切な表現を放送。視聴者やアイヌ民族らから大きな批判が起きた。
6月には当時の日本テレビ社長が北海道アイヌ協会の定例総会に出席し、謝罪した。7月には放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、明らかな差別表現を含んだものとして、放送倫理違反があったとする意見書を公表した。
「日本人類学会のアイヌ遺骨研究を考える会」代表の木村二三夫さん=平取町在住=は、他のアイヌ民族団体の代表者らと共に日本テレビの担当者に会って抗議し、経緯の確認や再発防止策を求めてきた。検証番組を見た木村さんは「丁寧な説明で真摯に対応している姿勢がよく分かり、誠意が感じられた。これからもアイヌの歴史を知ってもらう番組づくりを望むとともに、日テレがまいた種をどう刈り取るか、今後を注視したい」と話す。
検証番組に出演し、自身が差別を受けた体験を語った北海道アイヌ協会の中村吉雄副理事長は「アイヌ民族への理解が、メディア関係者にも不足していることを示した問題だった。日テレもアイヌ民族を取り上げる番組をつくっていくと約束されたので、未来志向の立場に立って、対応を見守っていく。共生社会の実現につながっていけばいいと思う」と話した。
放送直後に日本テレビに抗議した北大アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授は、検証番組の内容を評価したうえで、課題も挙げる。「この差別表現の問題をアイヌ民族に限定し矮小(わいしょう)化してほしくない。問題の背景には、日本社会が多様な人々で構成されているという現状認識の欠如がある。日本は単一文化、単一民族の社会ではない。放送人には社会に潜む排他的意識の深刻さを認識し、差別で人々が傷つくことない番組づくりを期待したい」と話した。(芳垣文子、西川祥一)
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- 【視点】
差別は、加害意思はもちろん、無配慮によっても生じる。 「傷つけるつもり(加害意思)はなかった」ことは、「被害者に十分配慮していた」ことを含まないので、差別を指摘された場合の弁明としては不十分。 また差別を指摘された場合に、それを