ボート混合フォア、八尾選手と立田選手「元気と感謝を」

加藤真太郎
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 【埼玉戸田中央総合病院ローイングクラブ(埼玉県戸田市)の八尾陽夏(はるか)選手(24)と立田寛之選手(29)が27日、東京パラリンピックのボート種目「混合舵手(だしゅ)つきフォア」(PR3)の予選に出場する。右手に障害がある八尾選手は漕手(そうしゅ)で、健常者の立田選手は舵手。「混合フォアは共生社会そのもの。精いっぱい頑張り、理解を広げたい」と健闘を誓う。

 PR3は障害がある漕手4人と、性別や障害の有無を問わない舵手の計5人が力を合わせて艇を進め、2千メートルのタイムを競う。日本代表は6月の世界予選で出場権を逃したが、その後、推薦枠で出場が決まった。

 八尾選手はふじみ野市在住。小学5年生の冬、おにごっこで走り回っていた時、脳梗塞(こうそく)を発症し右半身にまひが残った。筋肉が緊張し、右手は一度力を入れると、自分の意思で力を抜くことができない。手指が握ったまま開けなくなる後遺症「痙縮(けいしゅく)」のためだ。

 それでも常に、「どうすればできるか」と前を向いてきた。筑波大付属桐(きり)が丘特別支援学校東京都)で中2から陸上競技を始め、走り幅跳びのT37クラス(片まひで歩行または走行が可能な立位競技者)で日本記録を樹立。大東文化大でも陸上部に入ったが、パラリンピック出場には記録が足りず、2年生でボートに転向。課題だった持久力と漕(こ)ぐ技術を磨き、日本代表のシートをつかんだ。

 頭の中には常に、これまで支えてきてくれた病院や学校の先生、親友、両親らの存在がある。「元気や感謝を届ける漕ぎをしたい」

 立田選手は北海道出身。高校からボート部で舵手になり、日大や社会人で日本一を経験。2018年の冬からパラの舵手を始めた。

 舵手は艇の上で漕手に指示を出す司令塔で精神的支柱でもある。漕手は男女2人ずつで、2人が視覚、2人が肢体に障害がある。日本代表チームの最年長は49歳で最年少が17歳。理解を深めようと、立田選手はオールを片手で握って漕いでみたり、視覚障害の選手がどう見えるのか、スマートフォンのアプリを使って体感したりしてきたという。

 大手商社を退職し、パラリンピックにすべてをかけてきた。「まちなかには一見して障害があるとはわからない人もたくさんいる。大会への関心が高まることで、気づきや理解につながれば」と願う。(加藤真太郎)