117センチの体、ボートに見立て 逆転金の鈴木孝幸

照屋健
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 変幻自在にレースを展開できる。それが、5大会連続出場の34歳、鈴木孝幸の強みだ。

 前日の50メートル平泳ぎ(運動機能障害SB3)は前半から飛ばして銅メダルを獲得。この日の100メートル自由形(同S4)決勝は違った。「決勝は、みんな緊張して力む。前半は、落ち着いて」。後半勝負と決めていた。

 午前中の予選は自己ベストより5秒近く遅いタイムで通過。体力を温存した。決勝で隣のレーンを泳ぐ23歳のイタリア選手にラスト25メートルまでリードされても慌てない。「向こうが落ちてくるのが見えた」。残り10メートル付近でとらえ、自己ベストに近いタイムで北京大会以来13年ぶりの金メダル。めったにしないガッツポーズで喜びを爆発させた。

 「自由形は、後半のトレーニングを積んできた」のが功を奏した。生まれつき右足がなく、左足もひざまで。右腕はひじまでしかない。全身を使うなかで課題はいかに後半の余力を残すか、だった。

 留学先の英国で練習を積み、体をくるっと回転させるクイックターンをやめ、負担のかからないタッチターンに変えた。身長117センチの体をボートに見立てて分析し、動力を生む腹筋回りを鍛えた。それが後半の粘りにつながった。

 パラ競泳の魅力は「障害の違う選手が同じレースに出るので、五輪ではありえない差でもゴール付近では僅差(きんさ)になる展開がある。限られた能力を最大限に発揮するところに注目してほしい」という。そんな魅力を体現した逆転劇で、リオ大会で金ゼロに終わった日本選手団の雪辱を果たし、今大会の日本勢金メダル第1号に輝いた。(照屋健)