生まれたときの体と自認する性が異なるトランスジェンダーの作者が、過去に職場で受けた性被害と向き合う姿を描いた漫画「女(じぶん)の体をゆるすまで」(小学館)が7月30日に発売された。作者のペス山ポピーさんは女性の体を持つが、男性に近い性自認を持つトランスジェンダー。8年前、アシスタントについていた男性漫画家から「女の子」として扱われて性的なからかいを受けたり、体を触られたりするセクハラ被害を受けた。
ウェブサイト「やわらかスピリッツ」での連載中には、作品や作者への誹謗(ひぼう)中傷が相次ぎ、編集部が誹謗中傷を許さないとする声明を発表。コメント欄を承認制としたことでも話題になった。性被害をめぐる社会の変化や、誹謗中傷への対応について、ペス山さんと、作中にも登場する担当編集者「チル林」さんに聞いた。
■セクハラ、同じ人間として見ていないから
――作中では、8年前に受けた性被害について弁護士に相談したり、加害者と直接向き合ったりした過程を描かれています。かなり時間が経ってから性被害を見つめ直したきっかけとして「社会が変わった」ことをあげていますね
ペス山「じつは、女性たちが『セクハラは嫌だ』と思っていることを、MeToo運動で初めて理解したんです。今考えると変なのですが、生まれたときの性に違和感がない『シスジェンダー女性』は、セクハラを受けても怒らないってずっと思っていたんです。女性たちは嫌だと思っていないのだから、トランスジェンダーの自分がセクハラについて声を上げてもだれも聞いてくれないと思いこんでいた。あまりシスジェンダー女性の友人がいなかったことも理由だったのかもしれません」
チル林「当初、ペス山さんに…