うつむく選手に「そうじゃないだろう」 監督が3年生へ

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 第103回全国高校野球選手権大会は28日の準決勝を前に、49代表校のうち45校が甲子園を後にした。昨年、新型コロナ禍の影響による大会中止で、甲子園を目指せなかった先輩の思いも背負って臨んだ2年ぶりの夏。引退する3年生に監督は何を語ったのか。最後のミーティングから言葉を拾った。

 智弁学園(奈良)に敗れた横浜(神奈川)の村田浩明監督は、宿舎へ戻るバスの中でも涙が止まらずうつむく選手たちへ、マイクを手に取って言った。

 「そうじゃないだろう。3年生、ここまで連れてきてくれてありがとう。3年生が連れてきてくれたからこそ、私も甲子園に行けた。胸張って帰ろう」

 宿舎に着いたのは午後8時ごろ。1、2年生も多い若いチームは、次の甲子園に向けて素振りを始めた。

 25年ぶりの夏の甲子園での勝利を挙げた高松商(香川)。卒業後は就職を予定する生徒も少なくない。長尾健司監督は「コロナ禍で厳しい時代。でも、この厳しい状況を乗り越えているのだから、みんなは絶対乗り越えられる。困ったときは互いに支え合って、相談しながら、立派な社会人として、また顔を見せてほしい」とエールを送った。

 前橋育英(群馬)は京都国際に惜敗した1時間後、宿舎でミーティングを開いた。涙を流しながら聞く選手もいた。

 宿舎では毎朝の周辺のごみ拾いをチームの日課にしていた。「凡事徹底」をスローガンに、荒井直樹監督は野球を通じた人間形成を大切にしている。

 「支えてくれた多くの人に、前橋育英のユニホームを脱いだ姿でどう感謝の気持ちを伝え、恩返しできるかが大事だ」

 8度目の愛媛大会決勝でついに夏の甲子園への切符をつかんだ新田(愛媛)。静岡と対戦し、チームの歴史に刻まれる1勝を挙げた。岡田茂雄監督は、選手に語りかけた。

 「甲子園で1勝したことは胸を張っていいけど、本当の成果は明日から。愛媛の代表として甲子園に行くべきチームだったと思ってもらえるかどうか。引退なんかない。甲子園の経験を糧にして、今後も頑張ってほしい」

 春の選抜大会で準優勝した明豊(大分)は初戦で専大松戸(千葉)に敗れた。その夜、宿舎でのミーティングで川崎絢平監督はねぎらいの言葉をかけた。

 「日本一はとれなかったけどやるべきことはやった。誰ひとり手を抜いたやつはいなかった。本当にありがとう」

 高校野球は社会に出て必要な人間力や協調性を高めるための道具、というのが川崎監督の考えだ。

 「ここで学んだことは人のために動くことで、対価は『ありがとう』。これからも人のために動ける人になってほしい」

 初戦で5点差をはね返してサヨナラ勝ちし、甲子園初勝利を挙げた高川学園(山口)。次戦で神戸国際大付(兵庫)に惜敗した帰り、バスで誰も口を開かなかった。宿舎で選手たちを集めて、松本祐一郎監督は言った。

 「今は悔しいかもしれんけどよう頑張った。この学校で、甲子園で勝ったのはお前らだけなんよ。自信持ったらいい」

 「でも満足しちゃいけん。去年出られんかった先輩がしてくれたように、思いをつないでいかんといけん」

 選手たちが宿舎に残した色紙に、3年生はこんな言葉をつづっていた。「来年も後輩たちをよろしくお願いします」

(いずれも対面を避けるかたちで取材しています)