動物と列車の衝突、シカだけ急増 岩手の特定路線に集中

宮脇稜平、奈良美里
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 岩手県内でシカと列車が衝突する事故が急増している。鉄道各社は線路脇に侵入防止ネットを張ったり、シカが嫌う音を発する装置を車両に取り付けたりしているが、増加する頭数に対策が追いつかない状態だ。

 JR東日本盛岡支社管内では昨年度、動物と列車が衝突する事故が計754件起きた。件数はカモシカとクマが例年並みの計89件だった一方、シカは前年度比で1・5倍になる647件と大幅に増加。全体の86%を占めた。

 事故のほぼすべてが、山間部を走る山田線と釜石線で発生。また、降雪が多い1、2月に発生が増えたのも特徴になっている。

 急増の原因の一つは、個体数の増加だ。

 県自然保護課によると、県内で捕獲されたシカの頭数は、2014年度は約1万900頭だったが、20年度は倍近い約2万700頭に上った。

 さらに、岩手野生動物研究所の西千秋さん(40)は昨冬の大雪の影響を指摘する。「除雪され歩きやすい線路にシカが出てきた可能性もある」という。

 事故は列車の遅れにつながるため、鉄道各社は対策を講じている。

 JR東日本盛岡支社は、山田線と釜石線で事故が多発する場所を中心に、線路脇にのべ14キロにわたってネットを張っており、今後延長する予定だ。釜石線には発光器を5カ所に設置。早朝や夜間にレーザーを照射し、シカの目にあてて追い払っている。

 さらに今年6月からは、山田線の一部区間で、シカが仲間に危険を知らせる鳴き声と犬の鳴き声を合成した特殊な音声を出す装置を列車に取り付け、効果を検証中だ。運転士には「明らかにシカが近づかなくなった」と好評だという。

 しかし、盛岡支社の担当者は「生息数そのものが増加しているため、対策を取っても事故の件数はなかなか減らず、効果が見えにくい」と語る。

 シカとの衝突事故が毎年250件前後ある三陸鉄道も、同じ悩みを抱える。19年から線路脇にネットを張っており、その場所では事故が減るものの、路線全体では増えているという。

 保線土木課の担当者は「どうしようもない気持ちもあるが、衝突すれば運行に影響が出る。引き続き効果的な対策を探りたい」と話した。(宮脇稜平、奈良美里)