音楽家ゆかりの香水を発売 浜松の楽器店

長谷川智
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 【静岡】クラシック音楽ゆかりの香水を創作して発売した楽器店主がいる。浜松市中区にあるアオイ楽器店の川上嘉将社長(49)で、「バッハ:G線上のアリア」など3種類を考案した。少子高齢化で経営環境は厳しいが、「音楽の街浜松の香りを楽しんで欲しい」と意気込んでいる。

 店は父が1974年に創業。当初はピアノやギターが飛ぶように売れ、音楽教室にも多くの子どもが集まった。川上さんはバブル崩壊後に入社し、10年ほど前に社長を継いだが、「経営は下降一方」。昨年春からのコロナ禍で、教室を休講するなど打撃を受けた。

 同業者らと打開策を話し合う中で、「楽器は品番がわかればネット通販でも買えるが、本物の香りを楽しむことはできない」と香水を思いついた。香水は時間に応じて香りが変化するが、音楽も楽章ごとに変わっていく共通点がある。香りに包まれてクラシック音楽を聞く新しい文化的な空間を提案できないかと考えた。

 ネットで探した香水制作会社の「ルズ」(東京都品川区)に相談すると、「面白い。今までにない切り口」と歓迎された。浜松商工会議所の経営力向上補助金50万円も活用し、香りの薄いオードトワレの製造を委託することにした。

 苦心したのは香水のコンセプト。予算や今後の展開を考えて3種類とし、店で販売している楽器と関係が深いクラシック音楽を選んだ。音楽関係者と話し合って音楽家と曲を決めた。ルズ社と相談して香水ごとに香りの成分を工夫し、ふさわしい物語を考えた。

 「G線上のアリア」は「みずみずしさが清澄さに変化し透明感のある香りへ」と売り込む。「ベートーヴェン:エリーゼのために」は「フルーティーさが陶酔的になり甘い余韻へ」、「ショパン:幻想即興曲」は「透明感ある香りがしっとりとし温かみへ」と売り込む。

 ブランド名は「音楽の香り」で、各300本、計900本製作。7月中旬からアオイ楽器店や卸会社を通じた全国の店舗、ネット通販で売り出した。1本50ミリリットルで、5280円(税込み)。

 売れ行きがよければ、自治体や企業、学校などの歌にちなんだ香水作りも考えている。将来はアロマテラピーへの展開も検討していく方針だ。

 川上社長は「楽器店を取り巻く状況は楽ではないが、独自性が重要だと考えている。プログラミング教育をにらんだロボット教室をすでに始めており、高齢者向けの健康にいい音楽教室も構想している。挑戦しながら生き残りを図りたい」と話している。(長谷川智)