濁った海、泳いで気づいた パラ秦由加子が守りたい未来

菅沼遼
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 東京パラリンピックで28日のトライアスロン女子(運動機能障害PTS2)に出場した40歳、秦由加子は8年前に競技を始めてから、気づいたことがある。

 「私たちが地球を汚してしまっているんだな」

 海の水が濁っていて、手の先が見えないこともある。ゴミが浮いている時もある。前日の27日の試泳も腸球菌が基準値を超えたとして、中止になった。

 13歳で骨肉腫を発症し、右太ももから先を切断。就職後、26歳で幼いころに習った水泳を再開し、その後、トライアスロンの道へ。波も風も全身で感じられる魅力にひかれた。競技を通じて多くの尊敬できる仲間に出会い、世界が広がった。

 一方、真夏の暑さの中で走っていると危機感も覚えた。地球温暖化や環境汚染がさらに進んだら、どうなるんだろう――。

 「今の私があるのは、スポーツをやっていたからこそ」。大好きなこの競技を生涯スポーツとして続けるために、自分にできることを考えた。

 身近なことから変えてみた。買い物ではプラスチックゴミを極力出さない製品を選ぶ。メーカーは環境に配慮しているか、フェアトレード(公正な貿易)かどうか。健康な体作りについても学んだ。こんな自身の取り組みについて、昨年6月の競技団体のオンラインイベントで語った。

 「何かを選択することは『未来を選ぶ』ということ」

 押しつけがましく聞こえそうだから、あまり積極的には発信しない。2度目のパラリンピック出場となったこの日、得意のスイムはトップで通過したが、バイクで順位を落とし、最後は前回と同じ6位で走り終えた。笑顔でゴールした秦は言った。「ほかにも同じように片足でも速く走れる選手がいる。自分もまだまだ強くなれる」(菅沼遼)