フォロワー111万人 パラのスター、基金設立にも力

前田大輔
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 ベアトリーチェ・ビオ(イタリア)は思う。「フェンシングは、車いすの方が楽しい」。車いすに固定され、逃げ場がないからだ。「諦める」「逃げる」という言葉は、大嫌いだ。

 左の義手から繰り出す剣も、迷いがなく、直線的だ。胴体だけを攻撃できるフルーレの個人(障害B)決勝。序盤から引かずに攻め続けて中国選手を圧倒し、2連覇を達成した。コロナ禍を経て「前回よりメダルは重い」と笑った。

 11歳だった2008年、髄膜炎を患った。「生存率3%」とも言われる中、両手のひじから先と、両足のひざから下を切断した。それでも、5歳からのめり込んだフェンシングをやめず、史上初めて四肢のないフェンサーになった。

 前回のリオデジャネイロ大会で金メダルを獲得。「ベベ」の愛称で親しまれるイタリアの国民的スターになった。世界的有名ブランドのモデルを務め、ファッション誌の表紙を飾った。インスタグラムのフォロワーは、111万人を超える。米国のオバマ元大統領や、陸上短距離の世界記録保持者のウサイン・ボルト氏らとの写真が並ぶ。

 「スター扱いされるのは、すごく嫌いだ」という。なぜ、SNSで発信するのか。自ら楽しむ姿を見せることで、壁を取り払いたいと思うからだ。

 大病を患った翌年の09年、両親と一緒に基金を設立した。母のテレサさんは「同じような境遇の子どもを助けたかった」。義手や義足の購入を手助けしたり、障害の有無にかかわらず参加できる運動会を開いたりしている。東京大会には、基金がサポートしている7選手が参加。この日朝のトライアスロンに出た選手が銅メダルを獲得した。

 壁を取り払う目標は、続く。まず、3年後に母国のパラリンピック委員会の会長に就く。そして、7年後にオリンピック委員会の会長になって、二つの団体を統一させたい。「みんなが一つになれたら良い」。米・コロンビア大でスポーツ経営学を学ぶことが決まっているという。(前田大輔)