コロナの起源探るはずが…政治で遠のいた、理想も真相も

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瀋陽=平井良和
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 未来に起こり得る新たなパンデミックに備えるために各国が協力し、科学の英知を結集して新型コロナウイルスの起源を探る――。そんな理想は今や遠のき、武漢ウイルス研究所からの「流出説」が根強く残る起源をめぐる議論は、米中対立の構図から切り離すことが難しくなっている。

協調の象徴、疑惑の舞台に

 武漢ウイルス研究所では2002~03年に中国などでコロナウイルスの一種である重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した後、SARSの起源や様々なコロナウイルス類の研究が続けられていた。

 15年にはフランスの協力で国際基準のバイオセーフティーレベル(BSL)の最高水準を満たした中国初の実験施設が完成。米国立衛生研究所などの資金を受けた米国の大学と連携した研究も行われた、人類全体の脅威になるウイルスに対抗するための国際協調の舞台でもあった。今では学会の定説となっている「コウモリ由来」というSARSの起源を突き止めたのも同研究所の研究員だった。

 20年2月、武漢ウイルス研究所のチームは英科学誌ネイチャーに、同研究所内にデータが残っていた「RaTG13」というコロナウイルスの遺伝子配列が新型コロナと96%重なることが判明したとの論文を発表。このウイルスはSARSの起源を探る過程で、13年に雲南省の鉱山のコウモリから採取されたため、新型コロナが動物由来で、ウイルスを持っていた動物から人に感染した「動物媒介説」と考える根拠の一つとして科学者らに注目された。

 だが、最初の感染拡大地である武漢にある研究所内に、こうした近縁種のデータがあったということから、研究所が新型コロナの起源ではないかと疑う声も出始めた。

 米国で感染拡大が深刻化した20年4月には米トランプ政権の幹部らが「流出説」を唱え始め、「中国寄りだ」とする世界保健機関(WHO)からの脱退も表明した。ただ、流出説は「多くの証拠がある」などとされながらも根拠は示されなかった。世界各地の科学誌では起源となる動物や、ヒトへの感染源となった中間宿主など動物由来とみる研究が主体となっていた。

科学呑み込んだ政治の渦

 WHOは「犯人捜しではなく、将来のパンデミックに備える知見を得るため」として起源を探る科学者の調査団を編成し、今年1~2月に武漢の現地調査に赴いてウイルス研究所にも入った。流出の可能性については「RaTG13」などの近縁種の変異にかかる時間や研究所の防衛レベルなどから「極めて低い」と報告した。

 報告書では、起源を探る研究…

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