パラ金メダルの佐藤友祈選手に地元から「おめでとう」

中村純
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 ついにつかんだ頂点――。27日の東京パラリンピック車いす陸上400メートルで藤枝市出身の佐藤友祈(ともき)選手(31)が、念願の金メダルを獲得した。前回リオでの銀メダルから飛躍を誓い、成し遂げた偉業に地元のゆかりの人たちから大きな拍手が送られた。

 最後の直線を歯を食いしばりながら疾走する先輩の姿を後輩の藤枝市立広幡中の生徒たちは、自宅のテレビで見守った。劇的な逆転勝利に同校3年の清水暖(ひなた)さんは「すごい、やってくれました」と声を弾ませた。

 昨年10月、佐藤選手は母校の同中を訪ねた。「夢はかなえるもの」をテーマに、チャレンジすることの大切さやスポーツを通して学んだことを全校生徒約240人に語りかけた。最後に「東京パラリンピックでは世界記録を更新して絶対に金メダルを獲得し、みんなのところに戻ってきたい」と誓った。

 有言実行を成し遂げた先輩を後輩たちは「金メダルおめでとう」「格好いいね」とメールでたたえ合った。コロナの感染拡大で同中は今月26日に予定していた新学期入りが9月1日へ延期。部活動も制限され、つらい毎日が続くが、清水さんは「どんなに困難でもあきらめない。前に進むことの大切さを先輩が教えてくれました」と話した。

 佐藤選手は21歳で脊髄炎にかかり下半身と左手にまひが残る。2012年のロンドン・パラリンピックを見て車いす陸上を始め、リオ大会の400メートルと1500メートルで銀メダルを獲得。現在4種目で世界記録を持つ。今年2月からプロ競技者になった。

 「息が止まりそうでした」と激烈なレースを振り返るのは静清工業高(現静清高)時代の恩師、若林真理子教諭(64)だ。「目立たない生徒だった」という高校時代、やんちゃな生徒がいるクラスよりも保健室で過ごす時間が増えた。欠席が続き、このままでは卒業も危ぶまれる時、「何かに打ち込んでみたら」とアドバイスした。

 趣味だった囲碁部への入部を勧められ、県大会で入賞するまでになった。磨かれた集中力はその後の競技生活にも生かされているという。

 高校卒業後は地元の会社に勤めたが、演劇関係に進みたいと上京。そこで病に襲われた。郷里に戻り、ふさぎ込む日々が続いたが、自分の力で新たな目標を見いだした。

 表彰台でメダルを授与される教え子を誇らしげに見つめながら、若林さんは「懸命に努力し、ハンディを乗り越えて夢を実現させた。生徒たちも大いに励みになったはず」。

 友祈という名前は「友だちのために祈れる人間になってほしい」と両親がつけたという。今回、多くの人たちの祈りを受け、大輪の花を咲かせた佐藤選手。29日には1500メートルのレースに挑む。生徒たちと交わしたもう一つの約束である「世界新記録」のために。(中村純)