「20円で1万円札」アベノミクス再来を見過ごせぬ理由

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編集委員・原真人
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記者コラム「多事奏論」拡大版 原真人

 去年の秋に体調不良で首相を退いた安倍晋三氏が、地方遊説で再びアベノミクスの宣伝活動に乗り出している。菅義偉政権の支持率急落のなかで近く迎える自民党総裁選、総選挙は一波乱も二波乱もありそうな雲行きで、安倍氏の活動は今後の政局にも影響しそうだ。ただ、それ以上に国家財政への影響が懸念される。アベノミクスという「現代の錬金術」が息を吹き返せば、日本の財政運営は再び危うい経路へと迷い込む恐れがある。

写真・図版
アベノミクスを政権のエンジンにした安倍晋三前首相=2013年6月、樫山晃生撮影

 安倍氏は7月10日に新潟県三条市でおこなった講演で、みずからの政権の実績としてアベノミクスを誇った。

 昨年度の政府予算はコロナ対策で例年より大きく膨れあがり、政府は新たに112兆円の国債を発行した。そのことにふれ、こう強調した。

「20円で1万円札が出来る」

 「子どもたちの世代にツケを回すなという批判がずっと安倍政権にあったが、その批判は正しくないんです。なぜかというとコロナ対策においては政府・日本銀行連合軍でやっていますが、政府が発行する国債は日銀がほぼ全部買い取ってくれています」

 「みなさん、どうやって日銀は政府が出す巨大な国債を買うと思います? どこかのお金を借りてくると思ってますか。それは違います。紙とインクでお札を刷るんです。20円で1万円札が出来るんです」

 会場がどっとわくと、安倍氏の演説はさらに熱がこもっていく。

 「日銀というのは政府の、言ってみれば子会社の関係にある。連結決算上は実は政府の債務にもならないんです。だから孫や子の代にツケを回すな、これは正しくありません」

 「私はいまの状況であれば、もう1回、もう2回でもいい。大きなショットを出して国民生活を支えていく。大きな対策が必要だと思います」

 この演説にはどこか既視感がある。思い返せば9年前、暮れの総選挙を前に当時、自民党総裁だった安倍氏がこう訴えたのがアベノミクスの始まりだった。「輪転機をぐるぐる回して日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」――。

 アベノミクスの本質とも言え…

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