「重い障害児を地域の保育園で」手探りの挑戦 豊田市

中川史
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 重い障害がある乳幼児を自宅近くなどの地域の幼保子ども園で受け入れ始めた愛知県豊田市で今年度、研修派遣で障害児保育の知識や技術を身につけた保育士が、現場で力を発揮している。勤務先の園では同僚保育士らが障害の子に対する理解、接し方を習得するうえでも指導的な役割を担いつつある。

 市は2017年まで、重症児に専門の支援員のいる「市こども発達センター」での療育を勧めてきた。ところが、地域園への通園希望者を入園保留とした市の処分が19年、保護者の請求した行政不服審査で取り消しに。さらに親の就労や、健常児らと交わる地域での子育てを望む声などを尊重し、市は「地域園受け入れ」に方針転換した。

 ある日の「足助もみじこども園」。3歳児クラスで嚥下(えんげ)に心配がある「けんちゃん」の昼食を、保育士15年目の松本恭平さん(36)が介助していた。体が揺れないよう、牛乳パックを組み合わせたいすは発達センターの手づくりだ。園に届いた給食は、看護師ら限られた担当職員が刻んだりペースト状にしたり、のみ込みやすく手を加える。

 心身の発達に遅れがあるけんちゃんだが、春の進級以来、お店屋さんごっこが大好きになり、同い年の子たちと言葉はなくとも自然なやり取りが見られるようになった。母親は「体幹もしっかりし、ひざ立ちで遊ぶようになった」と喜ぶ。嚥下障害も原因になり得る肺炎にならなくなり、自分は9月に職場復帰する。

 松本さんは昨年度、センターに研修派遣された。保健師で市保育課の能見悦代・副主幹によると「もし希望者がいなかったら」と心配しつつ募集をしたところ8人が手を挙げた。1期目として松本さんら2人が選ばれ、今年度も別の2人が研修を受けている。

 松本さんは、過去に勤めた園で障害がある子と出会い、「より良い関わりができ、進路指導などで子にも親にも助言ができたら」と応募した。診療所も併設するセンターで知的、身体的、医療的な障害のある子のケアや保護者との関わり方など知識や技術を習得。今年4月、現在の園に赴任した。

 健常児と重症児の同時保育の体制づくりは、園も手探りだった。例えば、食事の工夫をだれがどんな環境で、どんな道具を使ってやるのか。センターでの調理の仕方を見学し、来園もしてもらって助言を得たという。河野妙園長は、保育士の不安軽減を図る園と、センター、市保育課の助言・協力と「三つの連携が安心安全につながる」と感じている。園では今、松本さんを講師に研修会も催し、障害児をめぐる知識、技術の共有を図っている。

 松本さんらは研修中に胃ろうや、たんの吸引も学んだ。さらに現場経験が加われば、特定の人だけに医療行為が可能な「認定特定行為業務従事者」の資格が得られ、医療的ケアができる保育士が誕生する。市の担当者は「研修派遣から戻った保育士が、吸収したスキルを地域園でアウトプットする仕組みはつくった。対応できる人が増えれば、市全体の保育が充実する」と手応えを感じている。(中川史)