デジタル庁、混乱の船出 予算集中で「敗戦」脱却なるか

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永田大、中島嘉克 ソウル=鈴木拓也 シンガポール=西村宏治
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 デジタル庁の発足が9月1日に迫る。世界的に見て遅れている行政のデジタル化の司令塔となるが、事務方トップ人事は直前まで調整が続いた。東京五輪パラリンピック向けアプリの入札が不適切で、母体となる組織の幹部ら6人が処分されるなど、混乱のなかでの船出だ。

 デジタル庁の「デジタル監」について政府は目玉人事と位置づけていたが、民間人の選考は混迷した。平井卓也デジタル改革相は着任後間もない昨年9月下旬、「デジタルの世界ではトップに女性が立っている企業が非常に多い。象徴的に、これからの時代、女性がいい」と持論を展開した。政府関係者によると、平井氏には意中の女性候補者もいて打診していたが、断られたという。

 今春ごろ候補に浮上したのが米マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボ元所長の伊藤穣一(じょういち)氏(55)だった。政府内ではデジタル政策分野の内閣官房参与を務める村井純・慶応大教授の推薦だと見る向きが多い。

 伊藤氏をめぐっては、少女への性的虐待などの罪で起訴された米資産家(2019年に自殺)から、かつて資金援助を受けていた問題が発覚。資金援助を匿名で処理するよう同僚に依頼していたとの疑惑もあり、19年に所長を辞任した。

 伊藤氏の登用は批判も想定されたが、「織り込み済み」(平井氏周辺)として平井氏は首相官邸との調整に入った。伊藤氏の起用方針が報じられると、ネット上を中心に疑問視する意見が噴出。政府はすぐに人事案を撤回することにした。ある官邸幹部は「彼がデジタル監になっていたら大バッシングだった。結果オーライだ」と明かす。

 人事は振り出しに戻り、官邸内には発足時に「空席」でもいいという声もあった。官邸側が再選考の条件としたのがリスクの少ない「学者」だった。満たす人物として平井氏が選んだのが、一橋大名誉教授の石倉洋子氏(72)だった。

 関係者によると、当初はデジタル監に提言する非常勤職として起用する方向だったが、急きょデジタル監に「スライド」させたという。石倉氏はグローバル人材などが専門の経営学者。首相周辺には「デジタル監は政策判断が求められる。実務をやったことがない人間にできるのか」と心配する見方もある。

 デジタル庁のほかの幹部を含め、人事の正式発表は発足日までずれ込みそうだ。デジタル監らは、いきなりの本番スタートを求められる。

 デジタル庁をめぐっては、母体となる内閣官房IT総合戦略室の幹部ら6人が処分される異例の事態になっている。東京五輪パラリンピック向けアプリ(オリパラアプリ)の入札が不適切だったことが、弁護士らの調査でわかった。

 調達の公平性に国民の疑念を招きかねないとして訓告や厳重注意とした。平井氏は処分で幕引きをはかりたいようだが、委託先企業をめぐる自身の発言への批判もあり、組織としての信頼性が問われている。

 オリパラアプリは海外客らの健康管理のためのものだったが、受け入れ断念で機能を見直した。その過程で、平井氏が内部会議で開発の委託先の一つであるNECについて「脅しておいた方がよい」などと発言していたことが6月に発覚していた。

 平井氏とIT室幹部が、NTT幹部と会食した事実なども週刊誌の報道でわかった。NTTはアプリ開発の委託先の一つであるNTTコミュニケーションズの親会社だ。

 発注プロセスを検証した弁護士チームが今月20日に公表した報告書では、IT室幹部が公正な入札を装うような対応をしていた事実が判明した。IT室の幹部ら6人が訓告や厳重注意の処分を27日に受けた。平井氏は大臣給与1カ月分を自主返納すると発表した。

IT化の流れに乗り遅れ、「デジタル敗戦」とも言える日本。先行する韓国では、情報システムがコロナ対策にも力を発揮しています。デジタル化推進には何が必要なのでしょうか。

 NTT幹部と会食したIT室…

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