総裁選、安倍氏への接近が活発に 首相周辺はうらみ節も

自民

笹井継夫、山下龍一、岡村夏樹
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 菅義偉首相自民党総裁任期満了に伴う総裁選をめぐり、安倍晋三前首相の動向が焦点となっている。先に首相の再選支持を表明した安倍氏だが、最近は表だった動きを見せずに静観の構えだ。立候補予定者からは秋波が相次ぎ、首相周辺は警戒している。

 総裁選への立候補を表明している岸田文雄政調会長は30日、安倍氏の事務所を訪れ、約10分間面会した。関係者によると、安倍氏は岸田氏が26日に開いた出馬会見に触れ、「評判いいね」と語り、エールを送ったという。

 岸田氏は、昨秋の総裁選に引き続き、安倍氏の支援に期待を寄せる。安倍氏の意向は、出身の党内最大派閥である細田派だけではなく、党内第2派閥の麻生派を率いる麻生太郎副総理兼財務相のほか、党内の保守系議員にも大きな影響を与えるためだ。

 出馬会見で岸田氏は、党改革案として、党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」と提唱。安倍、麻生両氏とのすきま風がささやかれる二階俊博幹事長の幹事長「続投」を事実上否定した。さらに、岸田氏が一度は「前向きに議論をすべき課題」と述べた選択的夫婦別姓制度については、「引き続き議論しなければいけない」と述べるにとどめ、制度導入に慎重な安倍氏への配慮が透けた。

 安倍氏との面会では憲法改正にも意欲を示したといい、安倍氏への「接近」が鮮明になっている。

 安倍氏に秋波を送るのは、立候補に意欲を示す高市早苗総務相も同じだ。

 高市氏は26日、記者団に「立候補したいと思ったのは安倍内閣のやり残した案件がいくつもあるからだ」と強調。自身の経済政策を「ニュー・アベノミクス」と説明し、安倍政権の政策の継承・発展を訴える。

 高市氏は無派閥とはいえ、保守系議員として安倍氏とはもともと近い関係にある。最近でも電話などでやりとりを続けており、立候補に必要な「推薦人20人」に向けて保守人脈などを頼りに動き始めている。

 ただ安倍氏は周囲に、「人間として菅さんを支持する」と語っており、官房長官として自身の政権を長く支えた首相の再選支持の態度を崩していない。

 一方、党内では岸田、高市両氏の活発な動きを安倍氏が「黙認」しているとの見方も強まっている。そうした安倍氏の姿勢に、首相周辺からは「裏切りだ」との声も出始めている。笹井継夫、山下龍一、岡村夏樹)