「風評加害者」って誰? 汚染土利用に漂う不安な空気

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アナザーノート 大月規義編集委員

 原発事故の取材で、「風評加害者」という聞き慣れない言葉を耳にした。魚や野菜が「福島産」というだけで売れなくなる「風評被害」は問題だが、福島産であることを理由に買わないと、いつか「加害者」と呼ばれてしまうのか? いやな空気を感じた。

「安全」への疑い

 環境省が5月にオンラインで開催した対話フォーラム「福島、その先の環境へ。」。パソコンの画面には、小泉進次郎環境相やお笑い芸人のカンニング竹山さん、なすびさん、被曝(ひばく)問題の専門家ら登壇者が映し出された。いずれも福島の復興を応援している人たちだった。

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 テーマは、たまった汚染土をどうするか。福島県双葉、大熊両町の「中間貯蔵施設」には2015年から県内各地の汚染土が運ばれ、今年度内に東京ドーム11杯分(1400万立方メートル)に達する見通しだ。

 もともとは宅地や田んぼなどの表土だったが、原発事故で飛び散った放射性物質がこびりつき、放射性物質を表土ごとはぎ取る「除染」が行われた。

 このうち、放射線量が比較的低い土砂を取り出し、全国各地の公共工事の盛り土などに再利用できないか、と環境省は考える。

 除染には3兆円もかかり、やっと中間貯蔵施設で集中管理できるようになった。それをなぜ外に広げるのか?

 施設の汚染土は、法律で45年には福島県外に出さなければならない。搬出先は決まっていないが、期限までに少しでも汚染土の量を減らしたいわけだ。

 ただ、安全だとしても身近な道路や堤防などに使われると、その地域が「風評被害」にさらされる恐れがある。このため福島県内で再利用しようとしても、住民の反対が多い。全国で進めるには、さらにハードルが高い。

 そもそも、環境省再生利用する土砂を安全と説明するが、原子炉規制法で決められた再利用の基準(1キロ当たり100ベクレル以下)を用いているのではなく、福島の事故で特別につくられた緩い基準(同8千ベクレル以下)を当てはめている。安全基準が二重に存在する矛盾は、事故から10年すぎても解決されていない。

新たなレッテル

 フォーラム開始から約1時間たち、司会者が「国民の理解を広めるには?」と問いかけた。

 福島県出身で東大大学院准教授(社会情報学)の開沼博氏が「事実の共有」が必要だと語った。そこにこんなくだりがあった。「被災地には(風評被害で)困っている人がいる。他方、風評の原因になるような理屈とか言葉とか、そういったものを『風評加害』と呼ぶが、正確でない情報が出回ってしまうこともあるかもしれない」

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除染でたまった汚染土を議論する小泉進次郎環境相(中央)、カンニング竹山さん(右)、なすびさん(左)=2021年5月23日午後2時4分、東京・六本木、川田俊男撮影

 小泉氏が開沼氏に同調した。

 「さきほど開沼さんの言葉で、風評加害という言葉があったように、私は風評加害者にならないこと。そういったことを一人ひとりが自分のなかで思いをもって買い物をするときも含めて思ってほしい」

 このやり取りが私には引っかかった。

 大前提として、流通している…

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