メガソーラーが宅地隣に 話し合いで貴重な湿地守れた
気候変動対策と、開発による環境影響のバランスをどうとるのか。脱炭素に向けて再生可能エネルギーの導入が進む一方、大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)をめぐるトラブルが各地で起きている。そんな中、住民と事業者との話し合いで計画を一部変更し、貴重な生き物がすむ湿地が守られた例がある。
岐阜県可児市の閑静な住宅街にある丘約4・8ヘクタールに太陽光パネル6800枚が並ぶ。その傍らに、シデコブシや食虫植物のモウセンゴケなど、絶滅危惧種を含む植物がひっそり生える湿地がある。わき水が地表を潤す「湧水(ゆうすい)湿地」だ。実は、元々の計画ではここは無くなる予定だった。
計画が持ち上がったのは2017年だ。元々は住宅街の未開発地だった。東京ドームとほぼ同じ広さにあたる土地にパネルが並ぶとあって、周辺の住民は景観や反射光の影響、希少な植物への影響を心配した。
名古屋市の事業者と住民との話し合いでは、住民側から厳しい意見が出た。計画の白紙撤回を求める署名が集められたこともある。
だが、住民と事業者が一緒に湿地の様子を見に行って議論を続けるうちに、溝は徐々に埋まっていった。
事業者、住民に加えて可児市、環境保全に詳しい研究者が協議会をつくった。景観への配慮や湿地保全のほか、災害時の対策やパネルを撤去する時に備えた積立金を準備することなどを定めた協定書を作り、合意した。はじめに話が持ち込まれてから3年ほどかかったが、双方が折り合う形になった。
協定書には「湿地群の環境と動植物を可能な限り保存するとともに、湿地が新生するための潜在的な要因(地形、水供給など)の維持が保証される開発事業とすること」と盛り込んだ。計画は一部変更され、湿地の大部分は守られた。わき水への影響が少なくなるよう、パネルの周りの斜面の崩壊防止に敷くシートは水を通すものを選び、湿地に直接土砂が流れ込みにくいよう周りに林を残した。
今、協定に携わった住民を中心にした「大森奥山湿地群を守る会」は、定期的に湿地の生物やわき水の調査や、観察道の整備をすすめている。こうした活動には事業者も協力し、一緒に汗を流した。担当社員は「変更できるところは住民側の意見に寄り添った」と話す。
「守る会」の斎藤隆穂会長(…