関東大震災の朝鮮人追悼式典、小池知事は今年も追悼文送らず

編集委員・北野隆一
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 1923年の関東大震災直後に起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する式典が1日、東京都墨田区の横網町公園であった。朝鮮人追悼碑建立翌年の74年から日朝協会などの実行委員会が主催。昨年から新型コロナウイルス対策で一般参加を断り、ネット中継している。宮川泰彦・実行委員長が「98年前の悲惨な歴史的事実を忘れず、世代を超えて伝承することが私たちの責務」とあいさつした。

 式典には歴代都知事が追悼文を送っていたが、小池百合子都知事は5年連続で送付を見送った。今年も実行委が要請したが、同じ公園内の都慰霊堂で同日開かれる大法要で「犠牲者すべてに哀悼の意を表している」として「個々の行事への送付は行わない。昨年と同様の対応にご理解を」との回答があったという。

 同じ公園内の別の慰霊碑前では、朝鮮人虐殺の事実を疑問視する「日本女性の会 そよ風」が2017年から開く集会もあった。参加者は「朝鮮人6千人虐殺はぬれぎぬです」と述べ、朝鮮人追悼碑を「撤去に追い込みましょう」などと主張した。

 この団体が19年に開いた集会では、参加者の発言が都の人権尊重条例により「不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)」と認定された。19年は集会後に衝突があり逮捕者が出たが、20年以降はコロナ禍で参加者を絞り、多数の警察官や都職員が警戒にあたったため、大きな混乱はなかった。

 政府の中央防災会議報告書によると、関東大震災発生直後、「朝鮮人が略奪や放火をした」などのデマを信じた住民の自警団や警察官、軍などによる殺傷事件が多発。「武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加え殺害する、虐殺という表現が妥当する例が多かった」とされている。(編集委員・北野隆一

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