車いすテニス4強入りの国枝慎吾 ようやく手なずけた諸刃の武器

稲垣康介
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 東京パラリンピック車いすテニスの男子シングルス準々決勝で、国枝慎吾は第1セット、2―5とリードされた。

 「セットを取られるのは覚悟しました」

 ステファン・ウデ(フランス)は4大大会などで過去60戦戦い、互いに手の内を知り尽くす宿敵だ。

 「ロブが的確で、自分から攻めないと一生ラリーが続いてしまう」

 勇気を持って攻めよう。腹をくくったことで流れが変わった。

 2時間18分の激闘でストレート勝ちした。

 試合後、一番頼りになったショットを聞くと、国枝は「バックハンドのダウン・ザ・ラインですね。そこがキーポイントだった」と答えた。

 この試合、国枝のバックハンドを使ってサイドライン沿いを射抜く決定打がしり上がりにさえた。

 その「トップスピン」をかけたショットこそ、国枝が車いすテニス界で先駆者としてはやらせたものだ。防御的な「スライス」と違い、一発で仕留める決定力がある。

 健常者と違い、フォアと同じ面で打つのが特徴だ。車いすの選手は立ち上がれないので、高く弾む球に対処するには、この方が力を乗せやすい。この打法を習得した2006年、国枝は世界ランキング1位に駆け上がった。

 ただ、この打法は強烈に振り抜くとひじに負担がかかる。国枝も2度、右ひじの手術をした。16年リオデジャネイロ大会は直りきらず、パラリンピックのシングルス3連覇を逃した。その後もグリップの位置や、振り抜く角度で悩み抜いた。スマホに残したメモは膨大な量になる。一時は引退も覚悟したが、東京パラリンピック本番にようやく最適な打法にたどりついたという。

 「割と最後までドタバタしていたんですけど、今日の攻撃はすごく良かった。自信になりますね。痛みもなく」

 頂点まで、あと2試合。不安なく、振り抜ける。稲垣康介