米国に失望するベトナムの活動家ら 「人権より安全保障を優先した」
ベトナムの民主活動家やジャーナリストらの間で、米国のバイデン政権に失望の声が上がっている。
コロナの「感染爆発」に直面するベトナム政府はSNSでの市民の発言を規制し、活動家らを相次いで逮捕しているが、8月下旬に来たハリス米副大統領が公の場で問題を指摘することはなかった。中国への対応を優先してベトナムの人権問題に沈黙する姿は、バイデン政権の外交がはらむ矛盾を露呈している。
「ベトナムの人たちはコロナのワクチンだけでなく、人権も必要としている。政府に拘束されている活動家の解放を求めてほしい」
大手タインニエン紙の元編集者フイン・ゴック・チェンさん(69)は8月24日、こんなメッセージを在ベトナム米国大使館にフェイスブック経由で送った。
チェンさんの妻、グエン・トゥイ・ハインさん(58)は今年4月、「反国家宣伝罪」で逮捕された。2016年に国会議員選挙に立候補したことがある活動家で、17年からは自ら基金を立ち上げて、拘束された民主活動家やその家族を支援していた。
ハインさんの逮捕から4カ月が過ぎたが、弁護士や夫のチェンさんとの面会は認められていない。ハリス氏の訪問は、状況を好転させられるかもしれない数少ない機会だった。
表現の自由などを求める市民グループ「LIV」も8月21日、昨年10月に反国家宣伝罪で逮捕されたジャーナリストのファム・ドアン・チャンさん(43)の解放と、政府や共産党に批判的なニュースサイトの閲覧ブロックの停止を働きかけるように求める公開書簡を出した。LIVによると、米国大使館の職員からは「副大統領のチームに伝えます」と返事が来たという。
しかし、いずれの期待も外れ…
- 【視点】
米国のダブルスタンダードは今に始まったことではない。ベトナムを含めて世界で民主を求めて活動する方々もじゅうじゅう承知だと思います。自国の戦略優先は冷戦時代から脈々と続いている。それでも特派員として中国駐在時に感じたことは、民主活動家にとって