在日韓国人2世らの母国語への思い つらく、苦く、熱く
桜井泉
現場へ! 隣の国のことば④
「生涯であれほどたくさん、韓国語を書いたことはない。母国の言葉で意思疎通が、まだ十分できなかった。取調官からは拷問もされ、怖かった」。千葉県市川市の在日韓国人2世、金元重(キムウォンジュン)(70)が、20代の頃の祖国でのつらい体験を語ってくれた。
1975年10月、軍人出身の朴正熙(パクチョンヒ)大統領が、「維新」と呼ばれた独裁体制を敷き、知識人や学生、労働者らの民主化要求を抑えつけていた。ソウル大学大学院に入って間もない金は、北朝鮮のスパイと疑われ、寄宿舎から連行された。
ソウル中心部、南山のふもとにある中央情報部(KCIA)は、市民や政治家、メディアなどの動きに目を光らせ、最も恐れられた組織だった。金は、その取調室で、来る日も来る日も「生い立ち」を詳しく書かされていた。最初の数日間は眠らせてもらえず、腕や太ももを棒で殴られた。
金は、日本名で公立の小中学…
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