富士そば、労組幹部の解雇は「無効」の審判 雇調金不正は認めて返還

江口悟
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 立ち食いそば店「名代富士そば」の店舗運営会社に懲戒解雇された労働組合の幹部2人が申し立てた労働審判で、東京地裁の労働審判委員会が2人の解雇を無効と判断し、未払い賃金318万円をそれぞれに払うよう会社側に命じたことがわかった。2日付。会社側は異議を申し立て、引き続き裁判で争う方針だ。

 この会社は、富士そばを展開する店舗運営会社「ダイタンディッシュ」(東京都渋谷区)。首都圏を中心に富士そばチェーンを展開するダイタンホールディングス(HD)の子会社の一つだ。ダイタンディッシュは、未払いの残業代などを求めた「富士そば労働組合」の安部茂人委員長と書記長の2人を1月29日付で懲戒解雇。ともに複数の店舗を管理する係長でもあった2人が、これを不当として労働審判を起こしていた。

 会社側は、①未払いの残業代請求の労働審判を有利にするため、業務報告書などの勤務記録を事後的に改ざん・捏造(ねつぞう)した②会社側の反証を困難にするため、会社のシステムにある勤怠データを改ざんした、などと解雇の理由を挙げた。2人はこれに対し、出退勤の勤務実態を裏付ける知人とのSMSのやりとりなどを示しながら勤務記録は正確だと反論し、データの改ざんも否定していた。2人の代理人弁護士によると、労働審判では、会社側の主張は懲戒解雇の理由として正当とは認められなかったという。

会社側、審判の日に改めて1カ月後の解雇を予告

 労働審判では「懲戒解雇」の有効性が争われたが、会社側は2日にあった審判に提出した書面のなかで、2人による新たな捏造が判明したと主張。1カ月後の10月2日付で2人を「普通解雇」にするとも予告した。だが労働審判委員会はこの予告については審判の対象外とし、懲戒解雇のみ無効と判断した。

 懲戒解雇の有効性を争う審判のさなかに会社側が普通解雇も予告したことについて、2人の代理人である棗(なつめ)一郎弁護士は取材に対し、「労働審判の意義が損なわれ、許されない」と批判した。安部委員長は「会社は解雇無効の結果を受け入れてほしい。一日も早く復職して、良い会社づくりに取り組みたい」と訴えた。

 ダイタンHDは取材に対し、労働審判の結果について「当社の主張はおおむね認められ、そのうえで、それが解雇に値するかについて当社の主張が残念ながら理解を得られなかった」とコメントした。異議を申し立てて裁判に移行させ、普通解雇の適法性も含めて改めて判断を仰ぐという。

 2人は、富士そば労組として、店舗運営会社による雇用調整助成金(雇調金)の不正受給の疑いも告発してきた経緯がある。

 その一部について厚生労働省が不正と認定し、違約金を含めて約300万円の返還を命じる処分が出たことも関係者への取材でわかった。

 処分を受けたのはダイタンHD傘下の別の店舗運営会社「ダイタンミール」(東京都渋谷区)。ダイタンHDによると、東京労働局の処分に従い、すでに全額を返還したという。

退社決まった従業員の有給休暇分、不正受給と認定

 厚労省関係者やダイタンHDの説明によると、不正受給と認定されたのはダイタンミールの従業員1人についての2020年7~8月の1カ月分の申請。別の運営会社の店で働くために退社が決まったこの従業員の有給休暇について、本来なら雇調金の対象にならないのに休業手当を支払ったことにして申請し、受給していたという。

 不正受給の認定は1人でも、同じ月に受給した全員分の返還義務が生じ、さらに違約金も上乗せされる決まりだ。このため、返還額は約300万円となった。さらに、ダイタンミールには処分から5年間は新たな雇調金の申請ができないペナルティーも科された。

 ダイタンHDは取材に対し、事実関係を認めて「深くおわび申し上げます」と謝罪。ダイタンミールの当時の常務取締役が責任をとって退任したとしたうえで、「他のグループ会社については不正との指摘は受けていない。コンプライアンス体制の確立に向けて引き続き努力していきたい」などと答えた。(江口悟)