「彼の走りが誰かの生きる力に」 パラ陸上・石田駆の背中押した恩師

深津弘
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 東京パラリンピックで、岐阜県各務原市の石田駆(かける)選手(22)=愛知学院大4年=が陸上の2種目に出場した。目標のメダルに届かなかったが、高校時代の恩師で、石田選手の走りを支え続ける岐阜聖徳学園高校陸上部監督の高木伸吾さん(44)は「新しい生きがいを持って人生を再スタートしたことに価値がある」と、教え子の快走をたたえた。

 石田選手は今大会、100メートルで日本記録の自己ベストを2度更新して5位に入賞。3日にあった最も得意とする400メートルでは予選を通過できなかった。

 もともと陸上選手で、岐阜聖徳学園高校時代にインターハイ出場。大学進学直後に骨肉腫が見つかった。左肩関節と上腕の筋肉を除去し、人工関節を入れる手術をした。半年後、パラ陸上の選手として競技に復帰したが、左肩の可動域が狭まり腕が十分に振れなかった。恩師のもとに通い、アドバイスを求めた。

 高木さんは、体重を効率よく足に乗せることや、肩甲骨までを腕と考えてバランスを取る方法を提案し、一緒に試行錯誤を重ねた。「参考にできる部分を彼が取り入れ、今の体で可能な最良の走りを自分でつくりあげていった」。「うまくいかないことがあると、確認のため何度も訪ねてきた」と高木さんは振り返る。

 8月27日の100メートル決勝で5位に入った後、石田選手から「次は400メートル。緊張しています」と電話があった。「普段着のままやればいい」と背中を押した。400メートルは決勝に進めなかったが、レース後のインタビューで「大きな会場でのレースは昔からのあこがれ。次のパラではメダルを取れるよう再挑戦したい」と口にした。

 高木さんは「走り方は今も模索中で、通過点というか初期段階。彼が頑張り続けることで、知らない誰かに何かが伝わり、生きる力になってくれればうれしいですね」と語った。(深津弘)