土石流災害対策、神戸市は独自条例制定

鈴木春香
[PR]

 【兵庫】20人以上が犠牲になった静岡県熱海市土石流災害から3日で2カ月がたった。台風の季節を前に、県内でも盛り土の点検など対策が進む。山ぎわに住宅が密集する神戸市では、過去には土砂災害で多くの人命が失われてきた。昨年、独自の条例を制定し、対策を強化している。

市が独自条例「不適正処理」防ぐ

 神戸市は昨年11月、熱海市の土石流で被害拡大の一因とされた危険な盛り土を防ぐため、不適正な処理を防止する条例を施行した。2018年に台風や豪雨災害が相次ぎ、京都市で建設残土が崩れる被害が出たことなどから、盛り土への危機感が高まったためだ。

 市環境局の幹部は、熱海市の土石流発生を受けて「こういう被害はどこでも起きうる。条例はやはり必要なものだ」と改めて思いを強くしたという。

 特徴は、5万平方メートル以上の大規模な埋め立てをする事業者に、保証金(1立方メートルあたり1100円)の積み立てを義務化したことだ。危険な盛り土を事業者が撤去しない場合、市が代わりに撤去する費用にあてる。罰金などの罰則もあるが「実効性の高い対応ができるようにした」という。

 熱海市の災害で議論になっている土地の所有者の責任も明確化した。事業者に違反があれば是正させるよう求めるほか、事業者が是正しない場合、所有者にも必要な措置を講じるよう勧告などができるとした。

 事業者に対しては、環境影響調査の義務化や、搬入土砂や水質の検査・報告を細かく規定。先行する自治体も参考にしつつ、きめ細かい内容を盛り込んだ。

 市は今年度、不法投棄が起きそうな場所に監視カメラを増設した。ドローンやヘリも駆使して監視態勢を強めているという。

 熱海市で土石流が起きた後には、神戸市は民家に近い盛り土など13件について緊急の立ち入り検査を実施し、問題がないことを確認した。国も8月、盛り土を総点検するよう各都道府県に依頼文書を出しており、神戸市はこの枠組みでも点検して報告する予定だ。

 一方で、独自の条例で規制を強化すると、他の自治体に土砂が運ばれるだけになる懸念もあるという。神戸市幹部は「うちが良ければいいわけではない。全国一律のルールを作ることが望ましい」と話した。

過去3度 大きな土砂災害

 神戸市は元々、土砂災害による被害を受けやすい土地だとされる。六甲山の地質は崩れやすい花崗岩(かこうがん)で、14、18年の豪雨災害で大きな被害を受けた広島県と同じ。山から海までの距離が短く人口が集中している特徴がある。過去には3度大きな土砂災害に見舞われ、そのたびに対策が強化されてきた。

 1938年7月の阪神大水害では土石流が市街地に流れ込み、死者616人、被災家屋約9万戸の被害が出た。これを機に六甲山系での国の砂防事業が始まった。昨年度末までに建設された市内の砂防ダムは454基。さらに今後50年間、毎年5基程度を造り続けていくという。

 1961年の豪雨では26人が亡くなった。住宅供給が盛んな時期で、宅地造成の工事現場などで被害が出て、国が宅地造成等規制法をつくる契機になった。

 3回目は1967年の水害。死者84人を出した。この後、川底を掘り下げたり堤防を造ったりする河川の整備が進んだ。

 阪神・淡路大震災でも揺れで土砂災害が起き、山の斜面へのコンクリートやネットの設置が進んだ。

 市によると、近年も土砂災害はたびたび起きているが、人命が失われる被害は出ていないという。(鈴木春香)

県が101カ所点検 要注意は1カ所

 県は3日、静岡県熱海市土石流災害を受けて7~8月に実施した緊急点検で、養父市出合で山肌が崩れて注意が必要な場所が1カ所みつかったと発表した。堰堤(えんてい)整備などの対策の検討を進める。

 点検したのは、土石流に関する土砂災害特別警戒区域のうち、住宅に影響がおよぶ101カ所。土砂災害につながるような地表の変化がないかドローンなどで調べた。下流の住宅への土砂災害のおそれが高く緊急的な対応が必要な場所はなかったという。