数学者も恐れる「ハマると病む難問」 解けたら1億円、企業が懸賞金

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石倉徹也
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 一見単純そうなのに80年以上も数学者を悩ませている未解決問題「コラッツ予想」の証明に、日本のベンチャー企業が1億2千万円の懸賞金をかけた。数学の問題にかけられた懸賞金としては世界最高レベル。問題は小学生でもわかるほど簡単だが、数学者の間では「はまると病む難問」「宇宙人が仕向けた罠(わな)」などと恐れられる。一体どんなものなのか。

 コラッツ予想は、1、2、3……と無限に続く整数の問題だ。1937年、ドイツの数学者ローター・コラッツ(1910~90)が予想したのは、次のような内容だった。

「どんな整数も必ず1になる」 80年以上未解決

 「どんな正の整数も、偶数なら2で割り、奇数なら3倍して1を足す。この操作を繰り返せば、必ず最後は1になるだろう」

 例えば3で始めてみよう。3は奇数なので、3倍して1を足すと、3×3+1=10。10は偶数なので2で割ると、10÷2=5。この操作を続けると、3→10→5→16→8→4→2→1となり、7回の操作を経て、予想通り1になる。

 11はどうだろう。11→34→17→52→26→13→40→20→10→5→16→8→4→2→1(操作は14回)となり、やはり1に行き着く。

 単純な四則計算のため、2桁や3桁程度なら、自力で計算できるほど。実際、2011年度の大学入試センター試験の「数学ⅡB」で出題されたこともあり、この時は、6と11は、何回の操作で1になるか、などが問われた。

 この問題を解決するためには、以下の二つを示せばいいことがわかっている。

①操作をした時に、○→△→◇→☆→○のように最初の数に戻ってしまう循環パターンがないこと(ただし、1→4→2→1を除く)

②操作をした時に、数がどんどん大きくなってしまう発散をしないこと

 だが、この先の手がかりを得るのが難しい。解法として様々なアプローチが考えられた。数が増えるごとに操作の回数がどう変化していくのかを統計的に調べていく方法や、正の整数ではなく負の整数や複素数で試して、その性質を調べる方法などが検討された。

 米エール大名誉教授の故・角谷静夫さんら数々の数学者が挑戦したものの、この予想がすべての正の整数で成り立つのか、または反証が存在するのか分かっていない。コンピューターを使った計算で、21桁までの整数で予想が成り立つことが分かっている程度だ。かけ算や割り算といった数学の最も基本的な概念でさえ、まだよく理解できていないことを物語っている。

懸賞かけたのはウェブサービス会社。社長も難問に挑戦続ける

 そんな中、証明に最も近づいたと言われているのが、数々の難問を解決してきた米カリフォルニア大ロサンゼルス校のテレンス・タオ教授(46)だ。24歳の若さで教授となり、「数学のノーベル賞」と言われるフィールズ賞を受賞した「天才」として知られる。

 2019年に投稿した論文(https://arxiv.org/abs/1909.03562別ウインドウで開きます)は、偏微分方程式を駆使して「コラッツ予想はほぼ正しい」と示した。

 「ほぼ正しい」とはどういうことだろう?

 論文が示しているのは「ほぼすべての数が、最終的に1に非常に近づく」ということ。すべての自然数について示したわけではないし、かならず1になるとも示せなかった。テレンスさんはメールでの取材にこう答えた。

 「登山に例えれば、私は山の大部分にロープを張り、登りやすくした。だが、頂上に達するには、まだ通れない非常に危険な場所が1カ所ある。解決へ前進はしたが、100%の証明には遠く及ばない」

 研究チームの数人がいまも解決に取り組んでいるという。

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