「横浜市長選大敗が引き金に」 菅首相の退任表明、地元に衝撃と警戒

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 秋の政治決戦となる衆院選が迫るなか、菅義偉首相(衆院神奈川2区選出)が3日、自民党総裁選への立候補断念を突然表明した。一方、河野太郎行政改革相(同15区)が総裁選に立候補する意向を固めた。8月の横浜市長選で野党系候補に大勝を許した自民党からは「総裁選が活性化する」と歓迎の声が漏れる。市長選で弾みをつけた野党は「政権が代われば内閣支持率が上がるのでは」と警戒を強めた。

神奈川県議「昨年のうちに解散していれば」

 3日正午前、菅氏が党総裁選の出馬をとりやめたとの速報は、県内の自民党関係者にも衝撃を与えた。

 菅氏の秘書を5年ほど務めた遊佐大輔・横浜市議は取材に「めちゃくちゃ悔しい」。横浜市議だった菅氏の1期先輩にあたる田野井一雄市議は「ショックだ。菅さんは国民のためだけを考えてやってきた。今はご苦労さんとしか言いようがない」と話した。

 「横浜市長選の大敗が引き金になったのは間違いない」

 ある自民党関係者はこう振り返った。菅氏が支援した元国家公安委員長小此木八郎氏が、立憲民主党が推薦した山中竹春氏に大敗。「菅さんが市長選に軸足を置けば置くほど人気の無さを実感した。選挙に強いと言われてきたが、意外とそうじゃなかった。『選挙の顔』にならないということだ」

 県議の一人は「支持率の高かった昨年のうちに、早く解散・総選挙に打って出れば良かった」と残念がった。「東京五輪パラリンピックをやれば支持率も回復すると思ったのだろうが、国民の関心はコロナ対策を何とかしてくれということだけだった」

 政界の注目は、衆院選に向けた「党の顔」に移りつつある。3日午後には同じ県内選出の河野行政改革相が党総裁選候補に浮上。この県議は「菅さんでは衆院選を戦えないと感じていた若手議員の多くも(河野氏の)国民的人気にのっかる。総裁選が活性化するだろう」と期待を示す。

 一方、新総裁を迎える自民党と対決する野党は、こうした動きに身構える。

 立憲民主党県連の青柳陽一郎幹事長は「政権が代わればご祝儀相場で支持率が回復するのでやりにくくなったというのが正直な感想だ」。そのうえで「我々の主張は変わらない。県内の党の候補が全員当選することを目指す」と話した。

 共産党県委員会の田母神悟委員長は「自民党政治が行き詰まり、追い込まれている。他の野党や市民と協力して横浜(市長選)のように政治を変える転機にしたい」と語った。

「吹っ切れたよう」選挙事務局長が感じた語調の変化

 菅氏の地元やゆかりの人たちは、総裁選への立候補断念を驚きをもって受け止めた。

 菅氏の衆院選挙区・神奈川2区にある横浜橋通商店街(横浜市南区)。買い物に来た60代女性は「コロナの対応で疲れたのでは」と菅氏を気遣いつつも、「1年で変わった気はしない」と政府の感染対策への不満を口にした。

 コロナ禍前は、年間約2千万人が訪れた横浜中華街は、この日も人通りがまばらだった。「誰が(総裁を)やっても同じだったと思う」と土産店で働く40代の日本人女性。この1年で知り合い約10人が店をたたんだという。近隣の飲食店主との話題はいつも時短要請への協力金の支給遅れ。「(次の総裁は)とにかく協力金で店を支え、ワクチン接種を早くして欲しい」と訴える。

 菅氏が衆院選で初当選した1996年以来、選挙事務局長を務めてきた斎藤精二さん(83)=横浜市南区=は、疲れているように見えた菅氏の語調がここ数日、強まっていると感じ、「何かを決断して吹っ切れたようだった」と振り返る。ただ、突然の退陣に、「菅さん本来の良さ、堅実な部分が出ないまま、やりたい政策ができずに終わってしまい残念の一言だ」と語った。

「神奈川を熟知した首相いなくなり寂しい」

 県内自治体の首長からも驚きの声が上がった。

 黒岩祐治知事は記者団の取材…

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