五輪・パラ表彰台ジャケット素材をデザイン 廣川玉枝さんのこだわり
東京オリンピック・パラリンピックの表彰式などで、選手らが身につけた「ポディウム(表彰台)ジャケット」。明るい朱色と未来的な感覚のメッシュの柄で注目されたそのニット素材をアシックスと共同で開発したのが、服飾デザイナーの廣川玉枝さんだ。肌に密着する全身タイツのような「スキンシリーズ」が代表作のひとつで、歌手レディー・ガガらが着たことも知られる。
表彰台に立つ時の服は「選手にとって正装で、いわばタキシード」ととらえ、きちんとして、強くかっこよく見えて、しかも長袖でも日本の酷暑に耐えるように丹念に柄の配置を決めた。
その作業は「人の肌の細胞一つひとつをデザインする感覚でした」という。世界的にもファッション先進国である日本の最先端の技術とセンスが結合したようなものづくりともいえるこのジャケット。製作過程や創作への思いなどを聞いた。
ひろかわ・たまえ 2006年、ブランド「ソマルタ」を立ち上げ東京コレクションに参加。第25回毎日ファッション大賞新人賞を受賞。単独個展「廣川玉枝展 身体の系譜」などの展覧会や企業とのコラボレーションも多数手がける。
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――今回のポディウムジャケットの素材は、廣川さんがこれまで手掛けてきた無縫製ニットの技術、スキンシリーズの技を使っているのですよね。
同じ編み機を使いながら、今回は裏地と表地が一体となって二重になるように成形しました。アシックスが人体やスポーツ工学研究で蓄積してきたデータを元に、テキスタイルに落とし込んでいきました。
肩回りや胸など人間の発汗する部位は網目を大きく、逆に発汗が少ないところは紫外線を避けるためにごく小さな網目に。柄のグラデーションを美しく見せるために、けっこう複雑な作業が必要だった。細胞一つひとつをデザインするような感じでしたね。
――人体工学の研究と柄のデザインはどんな関係性を生んだのですか?
記事後半では、イッセイミヤケとの出会いなどについて語っています。
アシックスは、アスリートが着て、どうすれば快適さを保てるかという研究を積み重ねてきました。その膨大なデータは、とても新鮮でこれからの服と素材作りへのたくさんのヒントを与えてくれました。
かたや私の方は、衣服は人間…