新型コロナウイルスの感染拡大で、治療に欠かせない薬も不足が深刻だ。自宅療養患者ののみ薬は入手が難しくなり、厚生労働省が通知を出す事態になっている。
「新型コロナ患者の増加に伴い、治療薬デキサメタゾンの需要が急増している」――。厚労省は8月27日、ステロイド薬デキサメタゾンの安定供給のために、全国の病院や薬局、卸業者に買い込みを控えるよう求める通知を出した。
デキサメタゾンは新型コロナで肺炎が悪化して「中等症Ⅱ」となり、自宅療養を続ける人が錠剤を服用する。服用が早すぎるとかえって症状が悪化する恐れもあるが、過剰な免疫による臓器へのダメージを抑えるとして承認されている薬だ。
コロナ治療に詳しいりんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)の倭(やまと)正也・感染症センター長は「適正に使えば、自宅療養で頼りになる唯一の薬。入手できない事態は困る」と話す。
自宅療養者への医療支援を東京都や大阪府などから委託されているファストドクター社(東京)によると、8月中旬ごろから関東、関西ともにデキサメタゾンの入手に数日かかるようになってきている。
国内で唯一デキサメタゾンの錠剤を製造する日医工(富山市)によると、同月中旬、2日ほどの間に月間出荷量に相当する注文が集中。その後も多数の注文が続き、「今はすべてにこたえられていない状況」(担当者)という。
同月31日には厚労省の新しいコロナ診療指針が発表され、デキサメタゾンについて、自宅療養者の急変に備えて症状が重くないうちから事前処方できることも明記された。さらに需要が増える可能性がある。
コロナで重篤化をもたらす血栓(血のかたまり)を防ぐ薬「ヘパリン」も不足している。
持田製薬(東京)は同月24日、同社が販売する「ヘパリンカルシウム」の出荷を調整すると発表した。1回使い切りで使いやすく、コロナの治療現場での使用が急増しているという。
沢井製薬(大阪市)でも感染拡大が一因となり、同じ薬を出荷調整している。
不育症の妊婦に薬が渡らない恐れも
この影響が出かねないのが…

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