頼みの政権批判票「敵失で突然蒸発」 総裁選候補6人に焦りや期待

自民党総裁選2021自民

大久保貴裕、斎藤茂洋、足立優心、石川和彦、上田真美、高木文子、武田啓亮
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 菅義偉首相が立候補を断念した自民党総裁選は次の首相を決める選挙戦となる。コロナ禍の閉塞(へいそく)感を打開できるのか。候補が乱立する可能性もあり、予想される顔ぶれの地元では新しいリーダーの誕生に期待が高まる一方、菅氏の突然の不出馬で戦略の練り直しを迫られる陣営もある。

岸田氏陣営「根底から作戦変更しないと…」

 8月26日にいち早く総裁選立候補を表明した岸田文雄政調会長。「国民、党員の声が政治に反映されていない。菅政権が今後も続くのが良いとは思われていなかった」。地元の中本隆志・広島県議会議長は3日、岸田氏の支援に注力する考えを示した。

 県議や広島市議らによる有志グループは13日から、党員・党友に影響力がある全国の県連幹部や有力者のもとを訪ね、コロナ禍で地方遊説できない岸田氏に代わって政策の内容を伝える計画だ。ただ、菅氏との事実上の一騎打ちを想定していた県連内の焦りは大きい。当て込んでいた現政権への批判票が「敵失によって突然、蒸発してしまった」(関係者)からだ。ある県連幹部は「根底から作戦を変更しないとかなり厳しい」と漏らす。

河野氏へ「祖父と父かなわなかった座、手中に」

 現役の閣僚からは、河野太郎行政改革相が立候補の意向を固めている。1月からはワクチン接種の調整役も担う。

 河野氏の祖父・一郎氏は元建設相、父・洋平氏は元衆院議長だ。洋平氏は野党時代の自民党総裁に就いたが、首相にはなれなかった。衆院議員になる前からの付き合いという地元・神奈川県平塚市の片倉章博市議(58)は太郎氏が「いずれは総理に挑戦したい」と口にするのを常々聞いてきた。「良くも悪くも、イエスノーをはっきり言える。祖父、父の2人がかなわなかった総理大臣の座をぜひ、手中にしてほしい」と期待する。

 河野氏はツイッターを駆使し、フォロワー数は約235万にのぼる。平塚商工会議所の常盤卓嗣会頭(66)は長らくの支援者だ。河野氏は酒を飲まず、食事の席でも政策を語る姿が印象に残る。「議員になる前から総理・総裁を目指すと言っている。彼の発信力、突破力をいかして、地方都市も発展するような、その街や時代にあった規制改革を期待したい」と話した。

石破氏へ「直球を大事にした政治を」

 過去4回、総裁選に出馬した石破茂元幹事長も立候補を検討している。鳥取市の地元事務所では菅氏の不出馬表明の直後から、党員だけでなく、一般の人からも立候補を求める電話が相次いだという。

 石破氏の元秘書の福田俊史・鳥取県議(51)は「本人は総理大臣になるのは目的ではなく手段だと言っている。コロナ禍の国難を乗り越えるために力を発揮してほしい」と話す。鳥取県自民党郡家(こおげ)町支部幹事長の細田日出男さん(76)は「ダメなものはダメ、いいものはいいと主張する。直球ばかり投げると嫌う人が出てくるが、直球を大事にした政治を」と期待する。

高市氏へ「初の女性首相、時代に合う」

 総裁選に女性が立候補したのは、2008年の小池百合子氏(現東京都知事)の1度しかない。今回は高市早苗総務相野田聖子幹事長代行の2人が立候補に意欲を示している。

 高市氏の地元の奈良県。自民県連幹事長の荻田義雄県議は「女性初の首相というのも今の時代に合うのでは」と期待を寄せる。高市氏が衆院議員になる前からの付き合いがある生駒市議会の中谷尚敬議長は「強い信念を持ちながら、気さくでとにかく地元の声に耳を傾けてくれる」と話した。

野田氏へ「閣僚経験ある政治家として」

 37歳で郵政相に抜擢(ばってき)され、早くから初の女性首相候補と目されてきた野田氏はこれまでも立候補の意欲を示しながら、20人の推薦人が確保できず断念し続けてきた。秘書だった長屋光征・岐阜県議(42)は「女性だからではなく、当選回数や閣僚経験のある政治家として総裁選に出てほしい」と期待を込める。支持者らからは「党に多様な意見があってほしい」という声も届いているという。

下村氏へ「苦労人で庶民感覚分かる」

 立候補を準備しながら不出馬を表明した下村博文政調会長も再び出馬を検討している。9歳の時に父を亡くし、交通遺児育英会の奨学金で進学した下村氏は東京都板橋区で長年、学習塾を経営し、都議を経て国会議員になった。元秘書の松田康将都議(44)は「二世議員ではない苦労人だからこそ庶民感覚が分かる。コロナ禍で経済的に苦しむ人にも実感に基づいて光をあててくれるのでは」と語った。(大久保貴裕、斎藤茂洋、足立優心、石川和彦、上田真美、高木文子、武田啓亮)