「Wの悲劇」の澤井信一郎監督が死去 「野菊の墓」「時雨の記」

 「野菊の墓」「Wの悲劇」など、良質な娯楽作を手がけた映画監督の澤井信一郎(さわい・しんいちろう)さんが3日午後7時5分、多臓器不全のため東京都内の病院で死去した。83歳だった。葬儀は親族で営む。喪主は妻郷子さん。

 1961年に東映入社。マキノ雅弘監督らの下で助監督を20年間も務め、81年に松田聖子主演の「野菊の墓」で監督デビュー。完成度の高さが評価された。

 共同脚本と監督を務めた薬師丸ひろ子主演の「Wの悲劇」(84年)は毎日映画コンクールの最高賞「日本映画大賞」を獲得したほか、多くの映画賞で脚本賞と助演女優賞(三田佳子)を受けた。日本アカデミー賞では「早春物語」と合わせて最優秀監督賞を受賞した。

 その後も「めぞん一刻」「恋人たちの時刻」「ラブ・ストーリーを君に」「福沢諭吉」「わが愛の譜 滝廉太郎物語」「時雨の記」など、アイドルものから伝記もの、大人の恋愛ものまで、奇をてらわない正攻法の演出で玄人受けする秀作に仕上げた。

 長期のモンゴル・ロケを行った2007年の「蒼き狼 地果て海尽きるまで」を最後に、監督を事実上引退していた。監督作以外では和田誠監督の「麻雀放浪記」(84年)の脚本にも参加した。

松田聖子さん「初めての映画であたたかくご指導いただきました」

 澤井監督の死去に接し、作品に出演した俳優らがコメントを寄せた。

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 「野菊の墓」で悲恋のヒロイン民子を演じ、銀幕デビューした松田聖子さん

 「澤井信一郎監督のご逝去を悼み、つつしんでお悔やみを申しあげます。私の初めての映画『野菊の墓』の撮影では、慣れない私にとてもあたたかくご指導いただきました。撮影の時、山野を一日中駆け回って疲れた私を、いつも励ましてくださいました。あの時の監督の優しい笑顔が忘れられません。本当にありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします」

三田佳子さん「代表作でともに戦うことが出来、大きな誇り」

 東映時代の撮影所仲間で、「Wの悲劇」で数々の助演女優賞を得た三田佳子さん

 「ご逝去の報に接し、寂しい思いでいっぱいです。『澤井ちゃん』『三田ちゃん』と呼び合い、切磋琢磨(せっさたくま)した若い日々を思い出します。澤井さんの代表作映画『Wの悲劇』でご一緒し、ともに戦うことが出来たことは、私にとっても大きな誇りです。もう一度、お会いしたかった。ご冥福を心よりお祈りいたします」

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 「わが愛の譜 滝廉太郎物語」で滝廉太郎を演じた風間トオルさん

 「ピアノを弾いたことのない私に吹き替えではなく、実際に弾いて欲しいと、1年近くレッスンをし、いつも、にこやかに、ある時は厳しく見守って頂きました。ドイツロケの時、目をつむってピアノを聴いていた姿を思い出します。天国でも芸術的な作品を作って下さい。ご冥福をお祈りいたします」