北欧島国出身のパラ選手がマラソン中にお辞儀し、声援に応えたわけ

藤野隆晃、河崎優子
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 東京パラリンピック最終日の5日に東京都内であった男子マラソン(上肢障害T46)で、沿道にいる観客に手を振り、立ち止まってお辞儀をしながら走った選手がいた。フェロー諸島代表のホーバル・バトンハマー選手(45)。北欧の島から来た唯一の選手で、感謝の思いを胸に完走した。

 通過点の浅草。右腕のないバトンハマー選手は左手に持った帽子を振りながら駆け抜けた。雷門前では立ち止まって一礼。その場にいた人たちからは、思わず「おおっ」とざわめきが起こった。

 フェロー諸島は北欧デンマークの自治領で、五輪には単独では出場できていないが、パラでは単独での出場が認められている。

 バトンハマー選手は東京大会がパラ初出場だ。幼いころからフェロー諸島を代表してスポーツをすることが夢だった。元はトライアスロンの選手だが、トライアスロンや自転車ではフェロー諸島代表として出場できないことがわかり、マラソンで出場することを決めたという。マラソンを始めたのは約8カ月前だった。

タイム遅れても「気にしない」

 5日のレースでは先頭から大きく離れてしまった。ただ、浅草以外でも沿道の人に手を振ったり、交差点でぐるりと小さな円を描いて声を上げたり。東京の街を楽しみながら、自己ベストを更新する2時間58分27秒で完走した。

 沿道の声援に応じることで、タイムが遅れることはもちろんわかっていた。だが「2分くらい遅くなったかもしれないけど、そんなこと気にしないさ」とレース後に笑顔を見せた。「東京が厳しい状況の中にもかかわらず、子どもたちや、色々な人が応援してくれた。感謝の気持ちを伝えたかった。すばらしい経験だった」藤野隆晃、河崎優子)