チャームポイントの笑顔がゴールの瞬間に…道下美里の地元も歓喜

陸上

貞松慎二郎、宮野拓也
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 東京パラリンピックの陸上女子マラソン(視覚障害T12)で5日、道下美里選手(44)=三井住友海上=が念願の金メダルを獲得した。ひたむきに練習に励み、トップアスリートとして地域とも交流してきた道下選手。出身地の山口や、練習の拠点とする福岡からも祝福の声があがった。

 生まれ育った山口県下関市の母校・下関南総合支援学校では、恩師で非常勤講師の安田祐司さん(68)と岡崎浩一校長(53)がテレビで応援。教え子の晴れ舞台を見届けた安田さんは「チャームポイントである笑顔がゴールの瞬間に見られて本当にうれしい」と目を潤ませた。

 「この学校が走りの原点だと思う」と安田さん。道下選手は前身の県立盲学校に入学した26歳の時から、陸上競技に本格的に取り組んだ。「当初は、陸上にのめりこむとは思わなかった」。ストレスで偏った食生活を改めようと学校のグラウンドなどを走り続け、2006年に卒業した後も、安田さんはマンツーマンで指導した。

 中距離走で世界の壁にぶつかり、08年に初めてフルマラソンに挑戦。地元で開かれた第1回下関海響マラソンを楽しそうに完走した姿を覚えている。前回のリオパラリンピックは現地で応援したが、今回はコロナ禍で断念。持って行くはずだった応援旗には、道下選手お気に入りの言葉「初志貫徹」を加えた。

 「描いていた通りのレース展開ができたと思う。リオでは悔し涙を流し、今回はうれし涙になった。最高の笑顔だった」

 道下選手が暮らす福岡県太宰府市では、ロータリークラブなどが「道下美里さんを応援する会」をつくって支援してきた。会長の今村次美さん(68)は「本当に素晴らしい」と喜んだ。

 会の活動がきっかけで、道下選手は地元の太宰府高校と交流。生徒たちは昨年、約700枚のメッセージカードを贈った。芸術科では応援の言葉を書いた横断幕も制作。8月の大会直前には、道下選手が練習場所にしている福岡市大濠公園でその横断幕を掲げてエールを送った。

 今村さんは「優しさや芯の強さなど、周囲が応援したくなる人柄が道下選手には備わっている」と話す。リオの銀を悔しがり、東京五輪・パラの延期に落ち込む姿も見てきた。「それを乗り越えての金メダル。おつかれさまと伝えたい」貞松慎二郎、宮野拓也)