コロナ禍、苦境の縫製会社 3代目は岡山デニム浴衣で未来をつむぐ

中村通子
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 生地も仕立ても「オール岡山」の着心地――。岡山県勝央町の和装専門縫製会社「縫夢ing(ホーミング)」が、県産デニムを使った浴衣(ゆかた)を開発した。コロナ禍の苦境のなか、さらに「新たな和装」へ挑むため、デニムの本格浴衣や子ども甚平など12品目をリターン品にクラウドファンディング(CF)で資金を募っている。

 縫夢ingは1970年創業。3代目の岡本新吾社長(53)によると、例年の夏は浴衣を始め、阿波踊りなど全国各地の祭りの衣装の需要に追われるが、コロナ禍で夏祭りは軒並み中止か縮小。もう一つの柱だった旅館の客用浴衣や従業員の仕事着などの縫製も激減し、仕事がほとんどなくなった。今は手ぬぐいやマスク、防護服の縫製でしのいでいる状態だという。

 「このままでは、和裁を支える縫い子がいなくなる」。岡本さんはそんな危機感から、妻弥子(やすこ)さん(54)と知恵を絞り、自宅で気楽に楽しめる「デニム浴衣」を作ろうと考えた。

 主要な生地には「日本綿布」(井原市)の極薄デニムを選んだ。昭和初期の織機でしか織れない「セルビッチ」と呼ばれる生地で、織る際に縦横の糸が揺れる特性から表面に細かい凹凸ができる。これが浴衣に欠かせないさらりとした肌触りになる。

 「一目ぼれでした」と岡本さん。このほか、アクセントに使う刺し子生地やガーゼ、カラーデニムなども県産素材にこだわった。

 デザインや縫製も工夫を凝らした。「おうち浴衣」(9900円)はカラーデニムを使い、左右の身ごろが非対称の濃淡2色という大胆デザイン。家庭の洗濯機で洗えるよう、すべてミシンで縫い上げている。

 子ども用の「二部式浴衣」(1万1700円)は一見浴衣だが、上半分は簡単に脱げ、ノースリーブのワンピースに変わる。子どもが元気に遊んで暑くなったり、帯がほどけたりする状況に対応するアイデアを詰め込んだ。

 吾妻袋(3千円)は、エコ都市・江戸で生まれた「マイバッグ」。現代の生活で使いやすいよう底にマチをつけるなど、縫製のプロならではの工夫を加えている。

 8月12日に始めたCFは目標の30万円を早々と突破し、2週間で60万円に。次の目標に100万円を設定している。資金は織物会社と共同で「新たな和装」の生地開発に使う予定だ。

 CFは30日まで。「CAMP(キャンプ)FIRE(ファイヤー)」(https://camp-fire.jp/projects/view/452986別ウインドウで開きます)で受け付けている。(中村通子)

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