埋蔵文化財保護、国が早期関与へ 萩生田文科相が見直し方針

神宮桃子
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 開発などに伴って見つかる埋蔵文化財の保護について、萩生田光一文部科学相が朝日新聞のインタビューに応じ、国が早い段階から文化財の評価や開発事業者との調整などに積極的に関与できるよう制度を見直す考えを明らかにした。明治の鉄道開業時の遺構で、8月に国史跡への指定が決まった「高輪築堤」の貴重な遺跡が現地保存されずに失われる恐れがあった経緯を踏まえたもので、文化庁は専門家の意見も聞いて法改正を含めた検討に入る。

 現行の制度では、文化財の保護は地方自治体の役割で、開発などで遺跡が見つかった場合、自治体が開発事業者と扱いを協議する。史跡に指定する前は原則として国の権限は及ばず、保存は「開発者や地権者の良心にすがるしかない」(萩生田氏)のが実情だ。

 高輪築堤は東京都心のJR高輪ゲートウェイ駅近くの再開発区域で2019年以降に出土し、当時錦絵に描かれた橋梁(きょうりょう)なども良い状態で見つかった。しかし、当初はJR東日本が現地保存に難色を示した。そうした中、萩生田氏は今年2月、現地を視察。「開発と保存を両立させ、現地で保存公開できるよう検討してほしい」と述べ、保存を強く働きかけた。3月には文化審議会も諮問に先駆けて現地保存を求める異例の意見表明を行い、JR東は4月、橋梁を含む一部を現地保存する結論を出した。

 萩生田氏はインタビューでこうした経緯を振り返った上で、「(今回は)たまたま東京だから大臣が現場を見てフェーズが変わったが、大事な遺跡が埋もれていくようなことがあってはならない。国がどう関わりを持つか、カードをもう1枚増やしておく必要がある」と述べた。

 方向性としては「専門性を持つ文化庁が地方と開発業者の間で調整役を果たせるようにしていくべきではないか」と語り、国が今より踏み込んで関わりを持つべきだとの認識を示した。具体的には、「文化庁ができるだけ先回りし、遺跡の価値を正しく評価するような力を持つべきだと思う。開発が是か非か、保存が必要か必要ないかという参考にもなる」と述べた。

 一方で、「あまり国が強く権限を持つと、街づくりに支障を来す。柔軟にケース・バイ・ケースで対応できるようにする必要がある」と、開発と保存のバランスへの留意も強調した。

 開発に伴って貴重な遺跡が失われた例としては、奈良市平城京跡で1980年代に見つかった「長屋王邸跡」が知られる。保存を求める声を押し切って百貨店が建設されたが、その百貨店も経営破綻(はたん)で2000年に閉店した。(神宮桃子)