衆院選「自民は30議席減の覚悟を」 元選挙参謀がみた古巣の惨状

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聞き手・小村田義之
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 菅義偉首相が退陣を表明し、自民党の議員らは衆院選をにらみながら、次の「党の顔」選びに動き始めた。だが、新型コロナ禍の出口は見えず、国民の強い不満が解消されたわけではない。自民党前事務局長で、約40年にわたって選挙対策を担い続けてきた久米晃さんは、古巣の現状に厳しい目を向ける。

     ◇

 ――首相が総裁選に出ないと表明する前、「将棋なら菅さんは詰んでいる」と指摘していました。

 「菅政権は一生懸命、コロナ対策に取り組んできたと思います。しかし、政治は結果責任です。ワクチンを求めて長い列ができるなか、政府のコロナ対策への不満・怒りは非常に強く、自民党の多くの議員は『菅さんでは衆院選を戦えない』と考えていました。菅さんが考えた衆院解散や党役員人事もできず、辞めるしか選択肢がなかったのでしょう」

 「私は、菅さんが首相にとどまり、コロナ禍が今のままなら、衆院選で自民党は現有276議席から30~50議席は減らすと予測してきました。玉砕覚悟の『バンザイ突撃』になるところだったわけです。菅さんが引くのはやむを得ないですね」

 ――総裁選で、自民党への期待は高まると思いますか。

 「総裁選は党にとってマイナスにはなりませんが、コロナ対策への期待が集まらなければ、衆院選へのプラスの効果は限定的でしょう。誰が首相になっても最重要課題は感染の収束です。ワクチン接種率を高め、感染者を減らし、病床を整備するしかない。感染者数で収束傾向が見られなければ、国民の納得は得られません。プラスのイメージを打ち出して国民の信を問うのが選挙の常道です」

 ――衆院選は自民党に厳しい結果になりうる、と?

 「選挙にウルトラCはありません。広報戦略と言いますが、広報は良いものをより良く見せる効果はあるけど、悪いものを良く見せる効果はないんですよ」

 「自民党は30議席減を覚悟して準備すべきです。野党共闘の効果もありますから、与党で過半数を取っても、自民党単独では過半数割れもあり得る。そうなれば、新しい首相でも選挙後に首相の責任を問う声が強まるでしょう。ただ、野党への期待が高まっているわけではないので、政権交代はないと思っています。野党の国会質問を見てもエキセントリックで、考え方の違う人を取り込むような度量を感じませんね」

 ――選挙参謀を務めながら、自分のことを「自民党支持者ではない」と言うことがありますね。

 「私は保守の人間であって、無原則な支持者ではありません。党に期待している点では、支持者なのかもしれませんが」

 ――保守とは、どういう意味で言っていますか。

久米さん曰く、自民党を支持しているのは「保守的な無党派層」。議員の劣化は国民と社会の側の責任でもある、と久米さんは指摘します。

 「国家があって個人がある…

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    米重克洋
    (JX通信社 代表取締役)
    2021年9月7日10時53分 投稿
    【視点】

    日頃各地で選挙の調査をしている立場から見て「自民党支持というのは固い支持ではなく(略)『保守的な無党派層』と言った方が近いかもしれない」という指摘は妥当だと感じる。実際、各社の世論調査では自民と立憲の支持率の差は時に4-5倍に達するような時

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    蔵前勝久
    (朝日新聞論説委員=国内政治全般)
    2021年9月7日10時54分 投稿
    【視点】

    久米さんのインタビューで以下の発言に注目しました。 「そもそも自民党は欧州で見られるような政党ではないと思っています。ドイツのキリスト教民主同盟や社会民主党は、イデオロギーや思想があってできた政党で、そこから議員が出てくる。でも、日本の自

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