第27回「痴漢です!」泣き叫んでも、助けはなかった 被害者は幾度も傷つく

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斉藤寛子、阿部朋美 編集委員・大久保真紀
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 私が叫んだらどうなるか。触られながら、いつも想像した。

 《周りにやばいヤツだと思われるかも。人違いかもしれない。逆切れされて殴られるかもしれない》

 そう思うと、声も出せなかった。

 電車の中で男性たちの手が体に触れる。そのたび、恐怖で頭が真っ白になり、体は硬直した。

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子どもへの性暴力第5部② イラスト・花岡紗季

 初めて触られたのは、高校に入学した翌日だった。東京都の殿岡たか子さん(23)=活動名=は、その朝の感触をいまでもはっきり覚えている。

 高校から始めた電車通学は超満員。151センチの身長では、息をするだけで精いっぱいだった。何かがお尻に当たった。乗車してすぐトントンとドアをノックでもするようなリズム。それがぐるりと裏返り、手のひらだとわかった。何度かお尻をなでられ、ぎゅっと握られた。

 《手がぶつかっているだけなのかも。満員電車ってこんなこともあるのかもしれない》

 真新しい制服のスカートはひざがすっぽり隠れる長さで、ブラウスのボタンも一番上までしっかり留めていた。痴漢なんて、漫画やドラマの世界のできごとだと思っていた。5回ほど力強く握られ、やっとの思いで腰を少しずらすと手は人混みに引っ込んだ。乗車時間わずか10分。電車を降り、高校まで泣きながら歩いた。校門に立っていた男性教諭が事情を聴いてくれ、保健室で休んでから授業に出た。

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電車内で毎日のように痴漢被害にあった経験がある殿岡さん=東京都内、井手さゆり撮影

子どもの性被害について考える企画「子どもへの性暴力」第5部は、通学路や自宅での被害、痴漢や性的な盗撮など、日常生活に潜む性暴力について取り上げます。

 痴漢は、翌日から毎日のように続いた。車内で他の乗客から死角になるような角にグイグイと体ごと押しやられたり、スカートをたくし上げられたりしたこともある。

 あるとき、下着の中に手を伸…

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連載子どもへの性暴力(全29回)

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