戦艦「三笠」の模型 にじむ時代と心意気

構成・吉川喬
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おかやまイッピン巡り 推し人・安田富亘さん

 この模型を初めて見たのは20年ほど前。京都の博物館でした。その瞬間、威厳と力強さ、木製の船体の曲線が持つ美しさに私は魅了されていました。時は過ぎて2016年ごろ。持ち主の男性から手放すつもりだと聞き、迷わず買い取りました。製造は明治期と伝わり、日露戦争で活躍した戦艦「三笠」をモデルとしています。

 三笠は1902(明治35)年、英国で建造。05年、ロシアのバルチック艦隊に勝利した日本海海戦で、東郷平八郎司令長官が乗艦する連合艦隊の「旗艦」の役割を務めました。年配の人にはおなじみの船です。

 これまで見たアンティーク模型で、似た作りは心当たりがありません。製造元は不明ですが、おそらく個人が楽しむために作ったのではないでしょうか。かなりの戦艦好きで、時間と生活に余裕のある人でないとこのレベルは作れません。

 のぞきこめば、いかりや大砲、艦内の階段など細かい部分まで作り込まれているのが分かります。後部のスクリューもリアルです。緻密(ちみつ)さに定評のある日本のおもちゃのよさが、この三笠にも出ています。

 倉敷山陽堂では私が集めた、おもちゃ約6千点、貯金箱3千点などを展示しています。50年代初頭につくられたロボット型のおもちゃ、明治期に女性の社会進出を呼びかける内容を盛り込んだすごろくなど、どれも自慢の逸品です。

 中でも三笠は、大人にも子どもにも人気の品の一つで、ガラスケースに入れて単独で展示しています。前後左右から隅々まで見て欲しいから。時代を切り取った「遺産」で、おもちゃとはいえ迫力があります。

 おもちゃは、見た目やたたずまいから時代の背景や大切にしてきたことを教えてくれます。直接見ないと味わえない空気感もある。この模型も、明治期の日本の勢いや心意気が伝わります。当時に思いをはせながら、ぜひ様々な角度から眺めてみて下さい。(構成・吉川喬)

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 倉敷山陽堂はブリキ、陶器製などの貯金箱を集めた「倉敷貯金箱博物館」を1997年開業。その後、大手音響映像機器メーカーのキャラクター犬の置物を展示する「倉敷DOG資料館」などもつくった。高校生以上300円、中学生以下200円。木曜定休。倉敷市船倉町1224(086・425・4577)。