「一枚撮ってもいいですか?」 路上写真家による出会い方のススメ

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西田理人
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 街を行き交う群衆の中に、ひときわ強いオーラを放つ人を見かけたら――。写真家・元田敬三(50)は、ためらうことなくいつもの一言を発する。「すみません、写真撮らせてもらえませんか」。意外にも断られることはほとんどないんだとか。ゆえに彼は、写真を「人と出会うためのパスポート」と呼ぶ。

元田敬三さんの個展「御意見無用」が、入江泰吉記念奈良市写真美術館で10月24日まで開催中です。記事後半では、柔らかな日常へのまなざしがあふれる新写真集『渚橋からグッドモーニング』についても紹介します。

 東京の新宿、大阪はミナミといったストリートを、日が暮れるまでふらふらと歩き回る。「ビビッと来たら、サッと近づいて、そっと声を掛ける」。OKの返事をもらえば、首から下げたストロボ付きの一眼レフフィルムカメラでバシッと一枚。そんな撮影スタイルを、25年以上続けてきた。

リーゼントヘアの強烈な「圧」

 入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催中の個展は、2016年に始めたシリーズ「御意見無用」から厳選した34点を展示する。リーゼントヘアの男を、21ミリの超広角レンズであおるように撮った1枚は、縦170センチ×横110センチのサイズ感もあいまって、とにもかくにも「圧」が強い。サングラス越しにカメラを見下ろす挑発的な視線に、見ているこちらまでヒリヒリする。画面右奥では別のツッパリが、求めたわけでもないのにカメラ目線でポーズを決めていて、どことなくユーモラスな趣も。構図の妙と偶然の面白さが際立つ作品だ。

 「大学を出るまで写真はおろか、表現活動とも全く縁がなかった」と語る元田が写真家を志したのは、就職活動中のことだった。堅実なサラリーマン人生を歩む自分の姿がどうしても思い描けずにいた時、写真家の卵を描いたドラマ「街角」(NHK、1993年)を見た。「自分もできるかも」。卒業後、地元・大阪で写真の専門学校に進み、新世界やアメリカ村でストリートスナップを始めた。

 ど派手なファッション、ごついピアス。写真家の目が強烈なビジュアルの男女に引かれ続けるのは、そこに「誰に何を言われようと、自分の美学を貫く姿」を見るからだ。生きたいように生きて、その責任は全て自分で背負う。そんな「御意見無用」を地で行く自由な生き方に、元田はずっと共感と憧れを抱いてきたという。

垣間見える人生の一端

 今回の個展では、被写体となった人々との出会いの顛末(てんまつ)を短い文章につづり、各写真のわきに添えている。

 「顔に刺青? 二度見して追…

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