かぶせた砂が風で飛ぶ 中田島砂丘の防潮堤で試行錯誤

加藤裕則
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 砂丘の景観と防潮堤をどう両立させるのか。浜松市でこんな課題が浮上し、行政と市民が知恵を出し合っている。議論は海岸のあり方にまで及んでいる。

 「防潮堤にはいろんな課題がある。市民で考え、親しみがわくような場所にしたい」

 清掃活動や勉強会などを催す「浜松の海を守る会」の清水浩利代表はこうあいさつした。

 8月6日午前、遠州灘に面した浜松市南区の中田島砂丘。ここに県や市の担当者や、砂丘に関心を寄せる市民ら約20人が集まった。防潮堤と砂丘のあり方を考えようという意見交換会でこの日で9回目。

 東日本大震災浜松市沿岸域では大津波に備える防潮堤建設の機運が高まり、県は東西17・5キロに標高13~15メートルの施設を計画。2014年春に着工し、330億円かけて20年3月に完成した。このうち中田島砂丘を貫く約900メートルの区間は19年1月にできた。

 防潮堤の土台は、CSGと呼ばれるコンクリートのような素材。一方、中田島砂丘は市を代表する観光地で、県浜松土木事務所は景観を守ろうと斜面を砂で覆い、最上部の平らな面にも30センチほどの砂をかぶせた。

 ところが冬の強風のため、最上部にかぶせた砂の多くが飛び散った。一部でゴツゴツしたCSGがむき出しとなり、今春、土木事務所は西側約300メートルに砂をかぶせ直したほか、コンクリートブロックを置くなどして砂の流出を防ぐ工夫をほどこした。

 今秋には、500万円ほどかけて東側250メートルの区間に砂をかぶせ直す。8月6日の意見交換会で同事務所は計画の概要を市民らに説明した。担当者によると、砂が飛ぶことは当初から想定しており、「どこでどのくらい砂がなくなり、どんな手法が効果的なのかを調べている」(担当者)という。

 一方、市民からは砂をかぶせ直すことに「何度も繰り返すことになるのでは」と指摘も出た。さらに「砂丘自体がやせてきている」「周囲の植生も含め、将来像を考えるべきでは」との声も上がり、今後、官民で協議会を設ける方向になった。

 防潮堤は中田島砂丘の入り口に立つと、砂山のようにも見える。観光客の中には砂丘の一部と勘違いする人もいる。このところ、中田島砂丘がテレビなどのロケに用いられるケースも増えているという。「(防潮堤によって)かえって中田島砂丘の価値が向上した可能性もある」(浜松市の担当者)との声もある。

 防潮堤は防波堤と違って海岸に造られるため、「海が見えなくなる」「自然破壊だ」と反対する声もある。県内でも、伊東市など観光が盛んな伊豆半島では建設に慎重な地区が多い。中田島砂丘では、防潮堤と景観や自然環境の調和に向け、本格的な議論が始まっている。(加藤裕則)