第1回最優先でなくなった「テロとの戦い」 米国を変えた新たな脅威とは

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9.11後の世界① デザイン・花岡紗季
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 米軍のアフガニスタン撤退とタリバンの首都制圧という劇的な状況の中で、米同時多発テロ(9・11)から間もなく20年が経ちます。フランスの国際政治学者マルク・エケル氏(40)は、この20年間を「イスラム過激派テロとの戦いが最優先課題だった時代」と位置づけ、今終わりを迎えていると考えます。逆に見ると、もはやテロは、差し迫った脅威ではない――。その論理と分析を聴きました。

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マルク・エケル氏=8月30日、パリ、国末憲人撮影

 ――アフガニスタンが、米軍の撤退とタリバンの首都制圧で混乱しています。

 「この展開は驚きです。これほど早くタリバンがカブールを陥れるとは誰も思っていませんでした。キッシンジャー(元米国務長官)はベトナム戦争で、米軍撤退から南ベトナム政権崩壊までの時間稼ぎにあたる『適当な期間』を見積もりました。ベトナムの場合は結果的に約2年でしたが、アフガニスタンの場合『適当な期間』がゼロだったばかりか、米軍が出て行く前にタリバンが到着してしまった」

 ――なぜそうなったのでしょうか。

 「タリバンの快進撃には二つの理由があります。一つは、隣国パキスタンが彼らを支援していたこと。この20年間、圧力をかけすぎると内部崩壊し、核兵器を持ったまま混乱に陥ることになりかねないパキスタンを、米国は扱いかねていました。タリバンはそうした状況をうまく利用した」

 「もう一つは、タリバンが市民サービスの提供とプロパガンダを併用し、民衆の支持を集めたことです。怠慢で腐敗したアフガンの行政とは異なる選択肢を提示できた」

 「欧米や日本は、アフガニスタンに膨大な金をつぎ込みましたが、社会はほとんど発展しませんでした。欧米のコンサルや民間治安会社ばかりをもうけさせたのです」

「9・11テロがアルカイダの『最高傑作』だった」――。9・11テロから20年。エケル氏が考えるテロより「差し迫った脅威」とは。

 ――これをもって、米国の敗…

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