新型コロナウイルスの感染力の強い変異株(デルタ株)にさらに特定の変異が四つ加わると、現在のワクチンの効き目が大幅に弱まる恐れがあると、大阪大微生物病研究所の荒瀬尚教授らのグループが突き止め、発表した。新たな変異の出現を想定したワクチン開発の必要性を訴えている。
グループはまず、ファイザーのm(メッセンジャー)RNAワクチン接種を受けた20人の血液で感染を防ぐ効果を調べ、デルタ株に対する感染を防ぐ効果があることを確認した。
ただ、ワクチンの効果は、従来のウイルスに対する効果より、やや下がっていた。ワクチンでできる、さまざまな抗体の一部が、デルタ株にくっつかないこともわかった。感染を防ぐ仕組みは、ワクチンでできる抗体が、ウイルスのたんぱく質にくっつくことだ。一部の抗体の効果が落ちていると考えられた。
デルタ株にさらに変異が生じると、抗体の効果がどうなるかも調べた。これまでに見つかった変異などから、デルタ株に新たに加わる可能性がある四つの変異を選び、病原性がない人工的な実験用ウイルスを作って調べた。
一つずつ、単独で変異を追加した場合は、感染を防ぐ効果があったが、同時に4種類全ての変異を入れると、抗体の多くがくっつけなくなり、大幅に効果が下がることがわかった。
対抗策として、従来の株でなく、デルタ株を元に抗体を作れば、4種類の変異を入れたデルタ株に対しても感染を防ぐ効果があることを確認した。
この4種類の変異のうち2種類を持つ変異株はすでに見つかっているという。感染者が多いと変異が生じる機会が高くなり、ワクチン効果を減らす変異が生まれる可能性はある。「新たなワクチン開発の戦略を練る必要がある」と荒瀬教授は指摘する。
査読前の論文がウェブサイト(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.08.22.457114v1.full#ref-44)で読める。(瀬川茂子)
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