窃盗罪の有罪判決、高裁に差し戻し 事実調べせず被告に不利な判決

阿部峻介
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 控訴審が被告に不利な方向に判断を変える際は、事実関係を認定するための「事実調べ」をしなければならない――。こう示した65年前の判例をもとに、最高裁第三小法廷(長嶺安政裁判長)は7日、窃盗事件の控訴審判決を破棄して審理を差し戻した。

 都内のスーパーで2019年に万引きしたとして窃盗罪に問われた女性被告(55)の裁判は、責任能力の有無が争点だった。

 一審・東京地裁精神科医の証言をもとに「重い窃盗症(クレプトマニア)で窃盗の衝動を抑える能力が低下していた疑いがある」として、刑が減軽される心神耗弱状態と認めて懲役4カ月と判断。だが、二審・東京高裁は検察の控訴を受けて「完全責任能力があった」と一審判決を覆し、懲役10カ月とした。

 第三小法廷はこの日、「被告に弁解の機会を与えるなど何らかの事実調べをしなければ、一審の無罪を有罪に変えられない」とした1956年の最高裁判例に言及。検察の求めた証人尋問などといった事実調べをせずに一審をひっくり返した高裁の裁判進行は違法だ、と指摘した。裁判官4人の全員一致で「破棄しなければ著しく正義に反する」と述べた。(阿部峻介)