ビジネスの世界に舞い降りた「棋神」 将棋AIが株価も予測

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 人間の実力をすでに超え、プロの対局の形勢判断にも使われるなど将棋界に定着しているAI(人工知能)。最もメジャーなオンライン対戦ゲーム「将棋ウォーズ」には「棋神」と名付けられたAIがいる。ユーザーの代わりに最善手を指してくれる有料の機能だが、その「神」が最近、なんとビジネス界でも活躍しているという。運営会社の「HEROZ」を取材した。

 将棋ウォーズはHEROZが2012年に開発した、ユーザー数600万人を誇る将棋対戦ゲームで、スマートフォンやパソコンを使ってネット経由で見知らぬ人と対戦できる。日本将棋連盟も公認し、ゲーム上の実力で段級位の免状なども発行している。

 「棋神」は対戦中に迷ったときにボタンを押せば「降臨」し、次の一手を教えてくれる機能だ。HEROZ社長の林隆弘氏は朝日アマ名人戦の全国大会優勝経験もあるほどの実力の持ち主。「小学生のころから、対戦中に『AIの力を借りれば必殺技が出せるんじゃないか』と思っていて、それを実現した」と話す。

 ここで使われているAIは、13年に初めてプロ棋士に平手(ハンデなし)で勝利し、話題になった「PONANZA(ポナンザ)」。開発者の山本一成さんは当時からHEROZに所属し、現在も技術顧問を務める。当時はまだAIは将棋界の「敵」で、「勝った直後は、『勝ってすみません』と言いたくなるようなムードだった」(林社長)。その後、AIは驚くほどのスピードで実力をつけ、人間をはるかに超えていった。同社も山本さんを始め、AIや将棋に精通したエンジニアを抱えて研究を支援してきた。

 その後、ポナンザなど将棋AIの開発で得られた知見をいかしたAI「Kishin(棋神)」を開発し、将棋の世界以外にも活躍の場を広げた。過去の対局記録である「棋譜」を膨大に読み込み、その盤面の評価を繰り返すことなどで強くなってきた将棋AIだが、そのノウハウがビジネスでのデータ分析に役立つというのだ。

 初めてAIをビジネスの形で他社に提供したのは16年のこと。同じゲーム業界で、株式会社ポケモンから声がかかった。協業を模索するうち、「独自の強みがあることに気づいた」(林社長)という。たとえば、HEROZでは将棋ウォーズにAIを使う以外にも、ソフトを開発する過程でバグ(不具合)の発見にAIを利用するなどしていた。だがまだその頃はこうした作業をAIが担うことは一般的ではなく、早い段階からAIを当たり前に利用していたことが強みになったという。

 その後、さまざまな業界にKishinを提供。金融業界ではSMBC日興証券と組み、投資家向けのサービスを作った。Kishinが過去10年分の株価や決算データを読み込み、株価を予測。それをもとに投資家に各銘柄の売買をアドバイスするという。

 担当したSMBC日興の丸山…

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    村瀬信也
    (朝日新聞記者=文化、将棋)
    2021年9月10日0時49分 投稿

    【視点】 将棋AIは、この十数年の間に飛躍的に強くなりました。棋士と対戦するイベント「電王戦」は大きな話題になりましたが、注目を集めるにつれて「将棋AIの開発は何の役に立つのか」という声も上がるようになったと記憶しています。Kishinの活躍は、そ