全盲の74歳がホスト役の新番組 FMまいづるで11日スタート
視覚障害者が自ら企画・出演するラジオ番組が、京都府舞鶴市のコミュニティーFM「FMまいづる」(77・5メガヘルツ)で11日から始まる。失明して閉じこもりがちになったが再び社会参加して得た情報や経験を伝えて、障害者と地域をつなげたいと意気込む。
番組名は「盲目は不自由だけど 輝きは見えるから」。ホストを務めるのは全盲の神田昌胤(まさつぐ)さん(74)と、丹後視力障害者福祉センター(京丹後市)相談員の堤隆志さん(63)だ。
神田さんは市内で住宅用サッシを製造・販売していたが、40歳過ぎに難病のベーチェット病で片目を失明。10年後に完全に視力を失った。年を取ってからの失明だったため点字は読めない。「周囲の迷惑になる」と後ろめたい気持ちになり、閉じこもる日々が10年近く続いたという。
7年ほど前から障害や福祉について学び始めた。役立ったのは福祉器具の情報だ。中でも画面や文書を読み上げる「音声パソコン」は「人生をいい方へ狂わせた」と笑う。「自分で触れて見ないと納得できないので、必要ないと思っていたが、今は最大の命綱です」。市視覚障害者協会の活動や障害者スポーツに取り組み、視覚障害者の支援団体を立ち上げた。堤さんは活動のよき相棒だ。
ただ、市内に視覚障害者は約300人いるが、市協会の会員は36人。かつての自分同様、閉じこもって苦しんでいる人は多いはずと感じていたところ、2016年に「FMまいづる」が開局した。
神田さんはパソコンで各地のFMを聴いてきた。「見えない者にとって一番肝心なのは声。勉強してきたことを困っている方にラジオでお伝えしたい」と同局に持ちかけ、月1回の15分番組が誕生した。
2日の初収録ではパーソナリティーの吉田美和さんの司会で神田さんが経緯や思いを語り、堤さんが27日に市内である府の視覚相談会の紹介をした。神田さんはシナリオを書いてきたが、晴眼者の堤さんや吉田さんと違い、収録中は読めない。「ドキドキしましたけど、話さなければいけないことはこの7年で体に入っていますから」
FMまいづるの時岡浩二ゼネラルマネジャーは「当事者に直接話していただけるのはラジオの一番のキーコンテンツ。情報は地域のためになるはず」と話す。
放送は毎月第2土曜午前8時半から。同10時20分から再放送する。受信地域外でもFMまいづるのホームページ(https://775maizuru.jp/)で聴け、放送終了後も再生できる。(大野宏)
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