全盲の男性が美術鑑賞を変える あの日のデートが広げてくれた世界

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大坪実佳子
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 白鳥建二さん(51)は生まれつき右目が見えず、左目は強度の弱視だった。小学校の黒板の字もよく見えない。通知表は5段階評価の1と2ばかり。小3で盲学校に転校し、その後の10年余りを過ごした。

 「見える人に負けないように」

 「見えなくてもちゃんと仕事ができるように」

 「社会は厳しい。健常者の何倍もの努力を」

 家族や先生からは、繰り返し激励された。21歳で卒業するまでに、マッサージの資格を取得した。

 でも、「見えることが正しく、見えないことは悪。見えない人は健常者より劣っている」と言われ続けている気がして、ずっと息苦しかった。

美術館デートで気づいた「もしかして」

 「もっと広い世界を知りたい」。

 卒業と同時に地元の千葉県を離れ、愛知県の夜間大学に進んだ。視力はさらに下がり、やがて全盲になった。

 ある日、付き合い始めた1学年上の彼女とデートをした。

 行き先は、レオナルド・ダビンチの解剖図展を開催していた美術館。見えない自分には無縁の世界だと思っていたのに、どういうわけか心が弾んだ。

 でも一体、何が楽しかったのだろう。

 好きな人と一緒にいられたからか。いや、もしかして全盲でも美術鑑賞ができるのか。

「見えている人」も見間違う?

 数カ月後、後期印象派の展覧会を訪れた。

 「真ん中に湖があって、木があって」

 そう案内していた男性職員が、しばらくして「よく見ると、黄色い点々が真ん中にある。湖ではなく原っぱでした」と謝ってきた。

見えている人でも、実は…。疑問を持った白鳥さんはやがてある行動へと駆り立てられます。記事後半では白鳥さんの得た確信と、美術鑑賞ワークショップの様子の動画をご覧頂けます。

 湖と原っぱは全然違う。職員…

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